再読して驚いたのが陰暦の9月13日の山畑シーン。
普通は主人公の政夫さんからの視点で、いきなり目の前に野菊が出てきてアーーーーッ!となる。
当然民さんは政夫さんの比喩のボケから竜胆に突っ込んでいくわけだ。
ところが村の常吉は違う。
途中まではセオリー通りなんだけど、頬かむりした常吉は薪をつけた馬の振りあげた前足の下を走り抜けてしまう。
民さんの前過!政夫さんの前通過!!
しかし馬は前足を振りおろさない。
巨大な一撃が叩きつけられるのはなんと常吉。
破壊され脱線しながら、四両目も画面に登場。

恋のおじゃま虫をドカンとやるのは迫力もさることながら、常吉のミニチュアを作る労力が少なくなるという
点も大きいんだけど、左千夫はそれをやらなかった。
あの馬の破壊力を見せつけるってのは、野菊の花びら数を数えたリアルタイマーに通ずるものがあるね。