Wikipediaで若尾文子を見ると、1933年生れで今83歳!自分が観た限りの映画
で言うと、「十代の性典」は、期待したけれど、大してエロくなかった。でも
その後はこの映画のせいで「性典女優」としてのレッテルを貼られてしまった。
「初春狸御殿」では大映の“アイドル女優”のトップ(物凄く可愛い!)だった
けれど、以後、いわゆる“セクシー女優”として、男性の観客から興味本位に
見られる、B級映画が確かに多かった。

Wikiによると増村保造とは、監督第2作目の映画「青空娘」以降、「清作の妻」
「妻は告白する」「赤い天使」「「女の小箱」より 夫が見た」「刺青」「卍」
「妻二人」「千羽鶴」など、20作にわたってコンビを組み、多くの名作映画を
残した、と言う。実はWOWOWで以前、特集をやっていて、挙げられている作品は
ほぼ観ているが、性的であったり人間関係のドロドロの所とか、とにかく暗い
映画が多かった。(確か、若尾本人は「妻が告白する」が自分にとっての一番
の自信作と語っていたと思う。)

自分としては、増村監督の映画の中では、田宮二郎と共演した「爛れ」は中々
良かったと思う。映画題名の通り、爛れた男女関係を描いているのだけれど、
白黒の画面がスタイリッシュな印象で好みだった。同じ監督の「赤い天使」も、
従軍看護婦役で、その内容も軍医(芦田伸介)との性的な関係を描いたもの
だったのだけれど、鑑賞後は"戦争は虚しい"という気持ちを強く抱かせ、きちん
と反戦映画に仕上げた意欲作だったと思う。

増村監督で有吉佐和子原作の「華岡青洲の妻」は、高峰秀子と共演して好演。
カンヌやベネチアで大賞が獲れるような、増村監督にしてはB級感のない秀作
だった。

しかし、初期の頃は別にして、性的・煽情的な役をほぼ一貫して演じていた作品
の中には、大小説家の原作・谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」(脚フェチ爺を翻弄w)
同じく、谷崎原作「卍」(増村監督。男一人&女二人の3P心中)・水上勉原作
「鴈の寺」(寺の和尚を翻弄w 因みに、森鴎外の「鴈」で高峰秀子と共演して
いるけれど、この作品は未見。)や巨匠監督・小津安二郎「浮草」・溝口健二
「赤線地帯」(売春宿の客の店を乗っ取り開店)・「「ぼんち」(山崎豊子原作。
船場の老舗の商家のぼんぼんの二号になって財産をせしめる。市川監督&和田夏十
脚本作品としてはベストと言っても過言ではない)など錚々たる傑作に出ていた。

大女優・京マチ子との共演作品も多く、小津「浮草」(旅芸人の若い娘役)では
さすがに京の存在感(熟女の魅力)が断然光ったけれど、溝口「赤線地帯」、市川
「ぼんち」では、打算でしか動かず男どもを翻弄する若い女のしたたかさを演じて、
その存在感は京と互角かそれ以上だった。

大映が倒産してしまって後ろ盾がなくなってしまったことや、“性典女優”"ピンク
女優"(既に死語!?w)という世間からの偏見が最後まで影響して、実績に比べて
世間一般の評価は低いと思う。吉永小百合様とは少し上の世代だけれど、同じく
若くしてデビューしたものの、違う路を歩んだ女優だった。