「立ち回りは、いきなり現場ではできませんよ。彼らは刀を持ったことも、差して歩いたこともない。
袴も穿いたことがないから、5回も座ったらケツが出ちゃって、そのまま引きずって歩いているもんね。
13人を演じた俳優は僕の立ち回りをみんな見に来ていましたが、見ててもできないです。
しかも、あの立ち回りは『動』ばっかりで『静』がない。ですから、僕のカットでは絡みに『俺がジッとしたら動くな』と指示しました。
止まるから、初めて動いたスピードも早く見える。だから、僕の所だけ違うんです。でも、『動くな』と言っても、みんな逸るんですよ。
立ち回りはちゃんと絡みができる俳優が本当にいなくなった。
ただでさえ芯の出来る主役がいなくなっているのにね。両方が下手なんだから、今の時代劇は見てられないわね。酷い。
昔の映画の所作事が素晴らしいのは、時間をかけているからです。時間というのはお金です。お金があったら、もっと画はよく撮れます。
僕らの若い時はテストを20回もやってくれましたが、今は1回か2回ですからね。それでは上手くなりません。
今の映像は、金がないのが全てです。俳優さんが悪いんじゃない。体制が悪すぎる。
悲しいです。いい時代を見ているだけに、今のテレビドラマや映画の現場に行くと、悲しい」