たびたびですみませんが、フィルム・センターの「支那の夜」の感想を続けます。
服部富子さんも印象的でした。良い女優さんですね。清楚な日本女性を好演していました。
「想兄譜」でしたか、戦死した兄の墓前で、長谷と一緒に墓参するシーン、上海のジャズバンドをバック
に歌うシーンがあったので、長谷に思いを寄せる日本女性として大切な役割が与えられていたようです。
これが見られただけでも、やはり京橋まで見に行っただけのことはありました。
もうひとつ、長谷の宿舎の管理人の息子に侮辱された桂蘭が、立腹してその坊やを打擲するシーンがありましたが、これは後で
長谷が桂蘭を叩くシーンの伏線だったのですね。つまり長谷は優しすぎる紳士で、桂蘭の暴力を
赦してしまう。これをカットしてしまうと、なぜ桂蘭が宿舎の女主人や長谷に、子供に暴力を
ふるったことを、後になってから詫びたのかわからなくなるでしょう。すくなくも、
もとのシナリオでは、長谷が理不尽な暴力を振るって、抗日娘の桂蘭を「調教」した、
というふうにはなっていないのですね。桂蘭を叩いた後で、長谷が桂蘭に「自分の負けだ」
といって謝罪しているシーンがそれを物語っているでしょう。