>>752
確かになずなには、
>どんなに背伸びしても子供でしかない自分に対する悔恨の念
はあっただろう。
でも、
>ただ夢のような一時を過ごしたと思い込んでいる典道
というのは、少し違うように思う。

それだけだとしたら、もしも…になる直前の
「俺は裏切らないよ」「裏切るよ、きっと」という二人のやりとりや、
典道が祐介を突然殴るという重要なシーンが意味を持たなくなる。

なずなの逃避行に付き合った典道も不安感でいっぱいだった。
だからこそ「駆け落ち」を勝手に「心中」のことと思い込んだり、
プールに潜り込んで姿が見えなくなったなずなに焦ったりしたのだろう。

なずなは、典道が逃げずに一緒に電車に乗ろうとしたことで、
彼は裏切らないと知り、だからこそ突然、引き返すバスに乗り悲しい現実に
戻る決意ができたのである。もちろん、なずなは、一連の行為が自分の気持ちに
整理をつけるための擬似的な逃避行と自覚していたのだが。

なずなの「次に会えるの2学期だね、楽しみだね」という最後のセリフは、
やはり、最後まで裏切らなかった典道に対するなずななりのやさしさと感謝の
言葉だったのであろう。

こうした二人の微妙な心理的機微が伏線として絡みあうことで、この作品の
切なさが一層増すように思う。