横浜に加納秀次(高倉健)が帰ってきた。15年前に組を関西に売ろうとした幹部の松岡(池部良)を殺害し、服役していたのである。東竜会会長の坂田(藤田進)は加納を優しく迎えた。

坂田「どうして知らせてくれなかったんだ」
加納「御迷惑をお掛けすると思いまして」
坂田「お前も律儀な奴だなあ。いくつになった?」
加納「46になりました」
坂田「46!そりゃあなるわなあ。15年たったんだ。ヤサはどうした?」
加納「南が面倒見てくれまして」
坂田「ああ、南。あいつなら大丈夫だ。事業の方もしっかりやっとるし。磯子に南モータースってなあ・・・あのな、お前に出所祝いを
   用意してあるんだ」

●加納は、会長から出所祝いの絵画を受取り、横浜の馬車道にある名曲喫茶のコンチェルトに入る。殺害した松岡の遺児と、自分を「ブラジルの叔父さん」と偽り文通を続けていたのである。
 加納は南(田中邦衛)と、横浜中華街の海南亭で再会する。

南 「とにかくおめでとうございます。殺風景な部屋ですみません」
加納「上等過ぎるよ」
南 「冗談じゃありません。親父の所へは行ったんですか?」
加納「ああ、さっきな」
南 「老けたでしょう?」
加納「出所祝い貰ったよ」
南 「絵ですか?最近絵に凝ってましてねえ。みんな往生してるんです」
加納「・・・・・」
南 「綺麗なお嬢さんになりましたよ。例の松岡の・・・一度会われたらどうですか?凄く会いたがってるみたいですよ。
   よかったらセットしますよ」
加納「殺した人の娘さんに会えるかよ」
南 「何言ってんですか。成長したのは秀さんのおかげじゃないですか」
加納「俺のおかげじゃねえよ。お前のおかげだよ」
南 「冗談やめてください。自分はただ使い走りしただけです。
   ほら、あいつですよ。明治の空手部にいて、ぐれてた竹田っていう
   のに行かせてるんです」
加納「ところで最近、賭場立ってるのか?」

●加納と南は大滝(山本麟一)の賭場へ入る。

大滝「やあ、加納さん。いつ?」
加納「昨日」
大滝「さあ、ゆっくり垢落として行って下さい」
 
声/誰だ?大滝の兄貴が挨拶したぜ。加納の秀さんといって、15年前に組を関西に売ろうとした松岡の伯父貴を刺したんだ。
  あれが有名な人斬り秀かあ・・・じゃあ、あそこにいるミナケンの兄貴なんかは?元子分だよ。
 
●東竜会の幹部が揃っているキャバレーへ入る加納と南。
 山辺(小池朝雄)柿沼(小林亜星)中井(天津敏)らが出迎える。
中井「やめろろなあ。欧州車なんて。車はアメ車だよ。アメ車に限る。なあ、南」
南 「ええ。でもシトロエンもなかなかいい車ですよ」
中井「あんなのはヤクザが乗る車じゃねえんだよ」
山辺「親父だってベンツ乗ってるじゃねえか。あれだって欧州車じゃねえかよ」
中井「わかってねえなあ。あのベンツはな、俺が・・・」
石井「伯父貴。伯父貴が乗ってるリンカーンね、日本に1台しかないっていう・・・あれ役者の玉岡修も乗ってますよ」
山辺「何だよ、あんな餓鬼みてえなのと一緒の車かよ」
中井「違うの!似てても違うんだよ!」
石井「違いませんよ。78年型のセイントンって奴でしょ」