監督 吉村公三郎
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フィルムセンターにて『喜劇 嫉妬』(喜の字は七が3つ)。
最終的には、怪作・珍作あるいは「(『誘惑』『春雪』とともに)新藤脚本&生方撮影とは
思えぬダルな代物」(丹野達弥)に分類されてしまうのかもしれないが、ことさら大げさな
音楽、コテコテの演出が結構面白い。当日観客の初老の男どもにもかなりウケていた。好き
放題やっていながら後半からストーカーと化す佐分利信に、オイオイ会社行けよ!と突っ込
める悦びが、観客には、ある。三井弘次も、このあたりまでは戦前キャラの輝きを保ってい
るように見受けた。さすがに高峰三枝子を病院から連れ戻すあたりはえげつなさ過ぎで、笑
えませんが(ご両人とも、演技としてとてもついて行けない世界)。
全体として何かのパロディも入っているのか。高峰と宇佐美淳が自転車で並走するあたりとか。 フィルムセンターにて『森の石松』。上映用ポジ、ネガは下加茂撮影所のフィルム倉庫の爆発により
失われているとのこと(新藤兼人による)。
「馬鹿は死ななきゃ治らない」のあまりに有名なフレーズを、与太ではなしに、むしろ冷徹に描出せ
んという野心的な試みは、虎造の石松がどのように受け入れられていたか、少々想像力を巡らせれば、
今日の観客にも十分感知できるはず。喜劇的場面も、この日の8割弱の入りの客に、かなりウケてる。
確かに、藤田進はヘタクソですが、轟夕起子とか笠智衆が、たいそう魅力的。終盤もかなり迫力あり。
同じく新藤兼人の著作によれば、「吉村演出は画面をよくひきしめて、タイちゃん(殿山泰司)の演技
が光った。演技をしているのかしてないのかという演技が絶妙で、実在感のある人間像がうかびあがっ
ていた」と絶賛。
引き続き、三百人劇場で見逃していた『足摺岬』をフィルムセンターにて。監督クレジット単独。
オイッチニー、オイッチニーの薬売役の殿山泰司が登場するまで、陰陰滅滅たる展開。しかし、
木村功好きにとっては、彼の芝居を堪能できる空間。金子信雄のブルジョア学生ぶりがおかしい。
遍路のおじいさんがどこかでみたことがあると思っていたら、御橋公。特高がまた不気味な迫力。
『地上』が好きなんだが、本作はその舞台も含め、さらに素晴らしく惚れ込んだ。佐藤忠男が熱く
論ずる、主人公下宿の寝たきり少年、子役時代の河原崎健三の清冽さは突出していて心に残ります。 金子信雄は、長いキャリアの中でキャラがぶれすぎで、
若い頃は失笑を禁じ得ないことが多い。 『森の石松』はかなり面白かったが、吉村監督の面白さの限界が感じられる。
結局、いい脚本を巧みなコンテで捌く、という演出家なんだな。
まぁ、今はそういう監督も少ないけどさ。 >>101
宇佐美淳が自転車で併走するのは、小津の麦秋のワンシーンで
原節子と宇佐美が併走してんですよ。そのパロディかも。
麦秋での原さんのセーター姿は目のやり場に困るわ。
やっぱ安城家の舞踏会はのがせないかな?森ファンだし。 >>106
jmdbより
「嫉妬」松竹大船 1949.01.05
「麦秋」松竹大船 1951.10.03
>>105
「森の石松」の感想と共にそんな事書かれても…
フィルムセンターにて、代表作の1つと言われる『偽れる盛装』。
新藤脚本は、当然ながら師匠・溝口の『祇園の姉妹』への挑戦で、しかも当初は山田五十鈴で東宝にて
撮影に入ったというが、京マチ子でも遜色ないというか、結果的にはスター誕生でよかったのかな。終
盤、そっと涙を流したりするあたりの呼吸が、たいへん印象に残った。もちろん、ド迫力の女のビンタ
合戦、狂乱の菅井一郎など、吉村演出ならではの見応えたっぷり。
だからむしろ、藤田泰子と小林桂樹のカップルのお話しなどは、物足りなく感じるほど。 若いカップルは「噂の女」っぽいね。
しかし五十鈴版「も」見たかったな。
東宝が組合闘争に入らなかったら完成したのに… 文芸座にて、ようやく『暖流』。たいへん面白い。
ただ残念なことに、これも総集編なんだよなあ。冒頭クレジットで「松竹1947」と出たから、
戦後の再公開版が残っているのか(124分、オリジナル前編94分・後編83分)。現存プリン
トだと高峰三枝子に比べ、水戸光子の登場場面が少ないような感もあり(インパクトの差もあるか)
当時の若者たち(その後多くが出征)の、知性的なお嬢様・啓子、ひたむきで素朴・ぎん、キミは
どっち!? の興奮をイマイチ共有できない。それでも、ラストの砂浜のシーンとかは結構、凄い。
オネエ言葉を操る病院の放蕩息子役の斎藤達雄なんかも、完全版ならば、もっと観れたのか。
同年に『土』、『土と兵隊』、『戦ふ兵隊』など。前年に同じ病院モノ『愛染かつら』、『上海』、
『五人の斥候兵』などが公開。 ラストシーン、振られるけど、美味しい役だよな、高峰三枝子は。
これが戦前の作品とはあぜんとするばかり… 昨年の三百人劇場でのラインナップから外されていた『春雪』をフィルムセンターにて。
佐藤忠男は当時(昭和25年)自らも失業していたこともあって、「劇映画であるが時代の真実の
記録」として思い入れたっぷりに吉村作品24選の1つにしているけど、水準的には、ちょっと落
ちるんじゃないかなあ。藤田泰子ファンにとっては、貴重な彼女の主演作のひとつになるのだろ
うが、いかんせんメロドラマとしても、お話しとして物足りない。もちろん、個々には当時は最
高級品の角瓶1本で娘を売ろうとする志村喬とか、龍崎一郎(かなりヘタ?)扮する佐野周二の
恋敵役の“いかにも”なブルジョア音楽家ぶりといった見応えはありますが。音楽も妙な素人臭あり。
それでも、会社からはサボタージュとみられて松竹との関係がさらに悪化した、終盤の曇空待ち
の砂浜のシーンは粘った甲斐がある出来。というか、ここだけやたら気合いの入った演出。 フィルムセンターにて『源氏物語』。谷崎潤一郎が「監修」。
10周年だからこれを映画にせい、という永田ラッパの無茶な注文に、監督、脚本、撮影、美術スタッフが
精一杯応えている。御簾越しのショットとか、それが宮殿を渡る風で少々めくれ上がっているといったセッ
トの質感が素晴らしかった。
でもいちばん凄かったのは、やっぱり主演の長谷川一夫かな。当時43歳で、脚本上の設定では26、7歳あた
りの源氏を風格をもって、しかし稚気たっぷりに演ずる。藤壺を抱き上げながら「これであなたはボクのも
のだ」とか、若紫を強奪していくシークエンスなんかは、この人じゃないと決まらないだろう。
温厚なお母さん役のイメージが強い東山千栄子が、結構コワかった。 源氏物語、原作に読んでないけど興味あったんで観てみました。
単身顔デカ寸胴の東山千栄子さん、当時は皆あんな体型だったのでは?なんて
思って観てました。東京物語の優しいイメージしか知らなかったんで驚きです。
拉致された上にありえないくらいに従順でいい人の乙羽信子が唯一かわいかった
けど、長谷川一夫の魅力がわかんない私としては同じ京マチ子との「地獄門」と
同じく、どう使用もないダメ男といった、氏に対していいイメージがわかないんです。。
話は随分と御都合主義だし、原作ってこんなもんなんでしょうか?
モノクロとはいえ、美術のすばらしさには圧倒しました。
欲を言えば、平安貴族の寝殿造りと十二単をカラーで観たかった!
平安時代を扱った映画で他に何かありますか? >>98
動物のお医者さんの 公輝 はむてる の先輩だね。
ハムさんと呼ばれていたのは太っていたとか?
長谷川一夫の魅力が全然わかんないんですけど‥
確かに演技上手いと思うけど、流し目キモいし何より暑苦しい大顔面が(ry 私も わからなかった。
演技はワンパターンでうまいと思わないが、妖気がある。
若い時は 流し目がべたべたしていて 気持ち悪かった。
顔のでかさは 昔の人だから 仕方ない。
よく見ると 太っていそうだが 目力で 忘れよう。 「ハムさん」て「公」を分解したことでないの・・よく判らんが ラピュタにて『堕落する女』。脳溢血で倒れてからの第2作。日曜日なんで補助席出現。
モノクロシネスコ、フィルム状態は巻によりけり(ニュープリント状態から、雨降りまで混在)。
往年のケレン味演出の残照が、そこかしこに。室内、屋外に添えられる勅使河原系前衛オブジェ、
草壁久四郎がキャストも含め失敗作と断ずる文脈での「原作のもつ耽美主義の感じ」らしき花の描
写、いかにものチープ音楽、上で指摘された苦笑せざるを得ない方向違いの意欲的映像表現も多々。
オーバーアクトの色悪・細川俊之、抑えた演技ながら吉村的プチストーカーを継承した田村高広と
もども見応えあるが、まだ若いがゆえに風格が足りない感も(高橋悦史はあくまでマイペース)。
肝心の桑野みゆきは、なんだか映画の冒頭から疲れきっていて、良家のお嬢様からの堕落のベクトル
が全く感じられず、確かにただただ痛々しい。引退作で、これでいいのか、という感じ。
終盤以降からも、少々ダレるが、全体として退屈はしない。水戸光子は、お母さん役かな。 「足摺岬」「地上」「こころの山脈」、地味ながらもいつまでも心に残る。 4日月曜日13時から、NHKBS2にて『大阪物語』放映age 原作を読破してからなどという邪な感情を抱いたがゆえにすっかり書き込みが遅れたが、『夜明け前』
をフィルムセンターにて。日曜日の11時、9割近い入り。 『地上』、『足摺岬』とともに監督お気
に入りの1本。モノクロスタンダード。 藤村の小説は日本文学史における重要作で、加藤周一によ
れば「日本の小説家が書き得たもっとも壮大な叙事詩の一つ」。新潮文庫の小さい活字で第一部、第
二部各2冊の4巻構成。 民芸の大御所、滝沢修演ずる若き半蔵は、木曽路を駆け抜けていく新時代
の息吹を横目でみるだけで、それに直接関わることなく馬篭宿に留まらずを得ない焦燥や無念をスク
リーン上では表現しきれておらず、それが本作品の致命的な欠陥になりかねないのだが、老境に入り
空間が凝縮されてくると、さすがの演技をみせてくれる。中盤過ぎから父娘以上の愛情を抱く乙羽信
子が登場するので、監督が心配した140分の長尺をダレずに観ることができた。
ただいずれにせよ、素材が壮大なだけに、脚本、演出、観客ともども、このテーマを十分消化するに
至らないようにも感じた。 吉村公三郎さんって若い頃は相当なイケメンですね。
それこそ俳優になってもおかしくないくらい。 >>127
そうだね。若い頃は、六代目菊五郎に似ている、と評判だったらしい。
でも、グルメが祟って(?)、でっぷり肥っちゃったけどね。
晩年は、またスリムな姿に戻っていましたけど。でも、戦後まもなくの
食糧事情の悪い時代にあれだけ肥っていたんだから、よっぽどいいもの
を食べていたのかな〜? >129
ホント?
でもあの美男ぶりじゃ女が放っておかないと思う。 高峰三枝子って、島津保次郎には肘鉄くらわせたのに。
(突貫小僧こと青木富夫の証言あり)
面食いなのねw もうすぐ文芸座で特集ですな
2月3日より>>126 >>131
島津保次郎に食事を誘われたが、二人で食事するのが嫌だから、
突貫が連れていかれた、って言ってたな。 文芸座にて『夜の河』。カラースタンダード、ニュープリント。場内盛況、9割以上の入り。
何だか「大人の映画」というのか、監督余裕の演出を感じた。田中澄江脚本。関係が出来てからは少々
落ちる感もあったが、お話しが山本冨士子のニンに合ったというのか、老練な上原謙、いつもの小沢栄、
ちょっとマヌケっぽくも一見の価値の若き川崎敬三らとの渡り合いに見応えがある。他の女優陣も充実。
カラー演出は最初期ゆえの微笑ましい部分が散見されたが、全体的には抑えたトーンで、染物と京都の
風景とよくまとまっている。音楽は確かに、これはちょっとなあ、というところ。この点以外は、味わ
い深く心にも残る、いい作品ではないかと思う。
文芸座にて『越前竹人形』。モノクロシネスコ、ニュープリント品質。本日も場内盛況。笠原良三脚本。
恐怖のマザコン&竹フィギュアー山下洵一郎は、その様子はいいんだが、演技が一本調子なので、中盤以降
がチト辛い。若尾文子全盛期、不義の児を孕んだ以降の彷徨が放散する芳香を堪能できる。鴈治郎も、また。
森繁を国宝とすると、本作の西村晃の間男ぶりも重文指定くらいにはなるか。郭の妹分役の中村玉緒が素晴
らしかった。本作も池野成の音楽というのか大仰な効果音が、せっかくの撮影と映画世界をぶちこわしていた。 文芸座にて『貴族の階段』。カラーシネスコ、ニュープリントながら音声がかなり悪い(上映前放送でお詫び
あり)のが残念だった。武田泰淳原作。平日16時の回ながら、本日も盛況。
たいへん面白かった。森雅之はいつもながらよいが、本作でのハマりぶりもファン必見。金田一敦子&叶順子
も少女漫画から抜け出してきたヒロインそのままの態で楽しませてくれる。セーラー乙女たちの帝国陸軍研修
をシレッと臆面もなく描写するあたり、さすがの演出。真面目な兄貴もその路線で清々しいし、へんな宗教に
浸っている細川ちか子とか、あと殉職警官になる菅原謙二なんかは安城家入っているようで印象に残る。
226後、就任した華族出身の総理大臣というと、何となくモデルを類推してしまうから本作が封印されてた
なんてことはないか? 原作、先ほどアマゾンで注文したが、百合百合描写多数でかなり面白いらしい。 岡田茉莉子濃厚キスシーンの「女の坂」もやるんだな
いつかラピュタで見たときはひどいプリント、真っ赤だった 文芸座にて『千羽鶴』。16mmプリント上映、序盤はキズが目立つ。 冒頭、お茶会控え室で“紅一点”とからかわれるが、
本作品としても森雅之がそういった存在であるという、邦画としてはなかなか希有な様態であると感じたが、どうか。
その森に激萌の木暮実千代も、極少でも油断すればいつでも恋狂ひのさもしいババアに陥りかねないながらラストまでセ
ーフなのがお見事。 杉村春子は、はじめからおわりまで縦横無尽で、今宵7割強の入の観客を存分に楽しませてくれる。
ホラー春子も本作でも登場。終盤の高笑いのシーンとか、エッ、これっていいの? という衝撃もある。「女ってかわい
いものよ」なんてシレっと言えるあたりが、さすが。 進藤英太郎、殿山泰司はワンシーン出演。 しかし新文芸座の特集で今観てるが抜群に面白い映画が多いな
吉村はもっと注目されてもいい気がする その夜を忘れないもオチはバレバレだけど面白かった
新文芸座で特集されたつながりで、増村よりも監督としての力量は明らかに上だと思った >>141
原爆投下直後の、皮膚の溶けた人々を映した映像が恐かった。
原爆を扱っているけど、
敢えて残酷な場面を映さないで心理劇に徹するのかな?と思っていたから油断した。
意識的か無意識的かわからないが原爆の傷跡を無理やり
封印しようとする広島の人々が妙に生々しかったな 三百人劇場でもこの前のフィルセン新藤特集でも上映されなかった『電話は夕方に鳴る』を文芸座にて。
モノクロシネスコ、ニュープリント。最終回の入りは7割弱といったところか。
監督作詞によるゆるゆる主題歌が流れるオープニングから少々不安になる。チラシには“コミックスリラー”
とあるが、うーむ。怪作・珍作にもなりきれず、ケレン味、ハッタリもなく、飄々と演出している感じ。
わたしの真後ろに坐っていた人は終始ウケまくっていたが、もう一つノレない。鴈治郎、殿山泰司、船越
とか、妙に抑えめな伊藤雄之助らが脇を固めているが、探偵小説マニアの秘書役小野道子はそこそこなが
ら、他の主要キャストが弱いか? お話し自体は新藤兼人オリジナルなのだが、あまり面白くない。 『電話は夕方に鳴る』昼過ぎの上映で、一旦上映中断して点検していた。
そのときは「映写機の調子が良くないので」とかアナウンスしていたけど、
後で「ニュープリントですがどういうわけかフィルムに非常に癖がありまして、当劇場の映写機では焦点が合いにくい部分がかなり広範囲に渡っておりました。」とか説明していたよ。
なんか納得行かないけど、そんなこともあるのかと思った。今回が初上映だったせいかな?
>>145
プリントの層の厚さはカラー・モノクロによっても違うし、プリントによっても違うことがある。
よくあるのが、モノクロ映画のプリントの前にカラーの予告編を繋げて上映したため、肝心の
本編がピンボケというケース。とにかくピンなどを放置する劇場が多過ぎる。
新文芸坐は良心的な方なのだろうが、自分はハラが立つので映画館に行くのはもう止めた。
家でTV画面で観た方がマシ・・・この場合は映写技師の怠慢だが、ああいう業界は
不勉強なのに頭が固いだけの職人や客を客とも思わない輩が多過ぎる。
そりゃ素人ふぜいの言うことをいちいち真に受けていたら仕事にならんのは分かるけどさ。
シネコンもオートなので映写条件は最高なのにピンはズレてたりするな。誰も調整せんのか? あれ?、この長文野郎、前の方でレスで「吉村は監督としては盆栽」
とかなんとか断罪してなかったっけ? 文芸座にて『一粒の麦』。カラースタンダード、ニュープリント。朝イチは入り2〜3割。
冒頭の集団就職列車による15歳の旅立ちから、“金の卵”がそれぞれ職場におさまるまでの序盤のシーク
エンス、こっちはどうしたって昨今の世相が脳内にあるから、種々考えさせられてしまう。その後もこれ
らの高度成長を支えたとされる福島少年少女への冷徹な描写のほうがこころに響き、せっかく若尾をカミ
さんに貰いながら相変わらずブチブチ自分探しから解放されない菅原謙次ら大人のシーンになると話しの
焦点がボケる感もある。オート三輪でのささやかなデイトでのロングショットでのシーンは、川口&野添
の美男美女による画ではないものの、本日併映の『地上』を思い起こさせるリリカルな吉村演出の真骨頂。
“麦は踏まれて・・・”の人生訓がストレートに通用していたこの時代と、それを愚直なまでに描写した
本作が発散する輝きが、ただただ、眩しい。 面白い映画ではないが、吉村のうまさが光る作品だったな。> 一粒の麦 文芸座にて『夜の素顔』。土曜日夕方とあってか、大盛況。カラーシネスコ、キズ少々もプリント上々。
新興流派の家元に収まるまでの序盤の描写は、京マチ子いつものテンションでブイブイいわせて、存分に
楽しませてくれる。しかし中盤に入って、“日本の放浪芸”が2画面分割で進行するあたりから、新藤兼人
オリジナル脚本によるストーリー展開の腰が据わってこない印象。せっかくの乞食扱いされている門付老
婆のエピソードあたりが活きてこない(京&若尾の共通する出自という伏線あたりも)。さらには、この
頃の若尾を京と並べると、ちょっと小娘臭が感じられ、お話しの意図を体現しきれないような。一方、オ
ープニングのキャストクレジットから大期待の浪花千栄子は圧巻。満席近くの客席を煽りまくり。いいも
ん、見せてもらいました。 根上淳のシーンはもっと削っていいよな。
浪花千栄子いいけど、詰め込みすぎ。 浪花千栄子の場面終わってから少し退屈したけど
船越英二の自宅での場面が面白かったな。 文芸座にて『女の坂』。カラーシネスコ、ニュープリント品質。
中盤あたりまで、良くも悪くもこの時代の岡田茉莉子のアイドル映画なのだな、と呑気に木曜日最終回
のスクリーンをぼうっと眺めていたら、後半から、>>138さんがおっしゃるような佐田啓ニとのねちっ
こいキスシーン(美男美女だから一幅の画ではあるが)が展開するあたり、それまでとのギャップもあ
って、当時の貞操観念から心中に至る親友の存在を考慮すると、かなりの助平描写のような。女ってこ
んなもんやでえ、という公三郎兄の教えなのか。 時間差親子丼(?)の、vs乙羽は喰い足りないもの
の迫力あり。顔面クローズアップが続くあたりは、少々煩わしい。 なんで、宮島義勇を使ったんだろうな。
あんな軽くて甘いメロドラマに。
成瀬/川島の「夜の流れ」にしても、
昔の映画の親子丼はなんか傍流的な扱いでごまかすのが多いね。 >>155
個人的に以前から「暖流」のようなメロドラマこそTVでやればよいと思
っていたので、いよいよ来たかという感じだな。
昼ドラのプロデューサーも企画のために古い小説や映画を見て相当に原作漁りを
しているのだろう。 「暖流」「安城家の舞踏会」のようなモノクロも良いけど、
この監督の極彩色映像は秀逸。
「夜の河」「女の勲章」「夜の蝶」「女の坂」「一粒の麦」「地上」
などの暖色系のカラー映像は比類なき出来栄え。正に一見の価値あり。
殊に「夜の河」は不世出の名キャメラマン宮川一夫の卓越した撮影術
と相俟って当時"世界一美しいアグファカラー"と称賛された後期小津作品
ですら、霞んでしまうかのような色調だ。
しかし、監督本人は"僕は色盲だ"と云ってたらしいが本当か?
色弱。
だからカラーになった時によく勉強したらしい。
「夜の蝶」も題材がクラブだから、夜、クラブ室内の撮影が美しい。 >>157
「実をいうと、私は生まれつき、色彩感覚がにぶい。とくにある種の緑と赤のみわけがつきにくい。
“紅緑色弱”とでもいうのだろうか。従って中学卒業後もすすむ大学、専門学校も制限され、そのこ
ともあって映画界へ入った。当時映画に“色”がなかったからである」
(吉村公三郎:映画のいのちー私の戦後史、p129、玉川大学出版部、1976)
この記述のあと、勉強した内容が具体的に書いてある。 >>158>>159
157ですけど吉村監督は努力の人なんですね。場合によっては、気障とも思える洒脱な演出術を
見ると、センスだけで成し得た天才肌にも見えたんですけど。考え違いでした。 こないだ恵比寿で「大阪物語」みてきました。
想像よりずっと面白かったよ。 それはgood news.
2月に新文芸座で見損なったんで。 岩波現代文庫の『京の路地裏』ほぼ読了したが、新藤兼人の巻末の解説が、非常に
味わい深かった。 「この連中はみな日本映画の賊ですよ」との溝口発言は、下加茂で挨拶に来た
吉村監督への愚痴らしい。 「その夜は忘れない」パッケージの写真が美しかったのでDVD買ったが酷かった。 シネマヴェーラ渋谷の「妄執、異形の人々2」特集にて『眠れる美女』上映age 岩波新書『映像の演出』の中扉の次の頁が『裁かるるジャンヌ』のスチールというのが、
なかなかシブい。68頁の浜作にてワイラーと談笑する図(1955)もいい写真だ。 文芸座「昭和32年へタイムスリップ」12月11日『大阪物語』上映age 文芸座にて『大阪物語』、モノクロスタンダード、プリントの状態は良好。19時の回は入り5〜6割。
浪花千栄子はマジ演技、鴈治郎は “いかにも” な終始放し飼い、香川、雷蔵あたりは、巨匠にシゴかれる
のを覚悟していたのが肩透かし、といったところか。 まだ白塗りの勝新も、少々気色悪い。
ラストなんか、やっぱりミゾグチが演出してたらもっとエゲツなかったんだろうなあ、という呪縛から逃
れ得ない作品だからこそ、吉村監督はヒョイヒョイと職人的に撮り上げてしまったのかもしれないが・・。
美術あたりはさすがなんで、野暮な妄想を排除すれば十分に楽しめる水準作か。 もう終わってしまったが、ラピュタにて1月20〜26日『堕落する女』上映age 四方田犬彦によれば、『間諜未だ死せず』は当時の国策協力映画としては異色の作品らしいので、
ぜひ観てみたい。 神保町シアター、大映女優特集にて、
『夜の蝶』 『偽れる盛装』 『夜の河』 『女の勲章』 『越前竹人形』
といった職人技炸裂の代表作一挙上映、2008 初夏のプチ公三郎祭りage 神保町シアターにて、三百人劇場→文芸座と見逃してきた『女の勲章』をようやく。日曜日で80人超の入り。
カラーシネスコ、ほぼニュープリント。 照明を不自然なまでに暗くしていたり、池野成の音楽(効果音?)
が相変わらず変だが、抜擢に渾身の演技で応える田宮二郎にグイグイ引っぱられて、中盤過ぎまで、息もつか
せずの感あり。その後の展開は読めるものの、序盤の若尾の立ち位置が良かったが、“3人目の女” 中村玉緒が
さらにお見事だった。この人にはいつも感心させられる。後半からの森雅之登場はボーナストラックだったが、
終盤少々ダレる一因にもなったか。 全体からすると、田宮が美味しいところをすべてかっさらってしまい、
企画意図に反して女同士のバトルが不発に終わってしまったような。救いようのないラストは、さすがの二郎
タンも、うろたえ演技でしか対応できず。 6月11日(水)、文芸座・香川京子特集にて、『地上』&『大阪物語』上映age ラピュタ京都映画特集にて、『偽れる盛装』『夜の河』『女の坂』上映age 「婚期」若尾&野添姉妹が義姉の京をイビる。
いつの時代も変わらないんだねぇ… ラピュタ10周年女優特集総集編後期、『わが生涯のかがける日』、『喜劇 嫉妬』上映age ラピュタ年末〜「昭和家族百景」特集、『家庭の事情』上映age 神保町シアター、森雅特集第一週にて『安城家の舞踏会』、『わが生涯のかがやける日』、
『千羽鶴』、『貴族の階段』、2009新春プチ公三郎特集age 『暖流』は、総集編しか現時点では観れないのが痛感だが、
もっともっと、評価されて、よいと思う。 「婚期」がいいなぁ
冒頭、高峰三枝子の家の水洗トイレの水の流れが良いとほめる若尾文子(*´Д`)ハァハァ 高峰さんがああいう役やるのも珍しいよね。
嫁に行った家庭臭強い長女。すごくよかったわ。 「夜の蝶」 衝撃のラスト
白目の山本富士子(*´Д`)ハァハァ 神保町シアター、近代文学全集特集にて、『夜明け前』&『地上』上映age 文芸座、京マチ子特集にて、
『偽れる盛装』、『夜の蝶』、『夜の素顔』、『婚期』、『女の勲章』、『源氏物語』
上映age 『その夜は忘れない』
寝てる田宮を覗き込むような若尾文子に(*´Д`)ハァハァ 日本映画専門チャンネルで6・7月連続特集
「吉村公三郎 枠(フレーム)に見つめた大映女優」を放映中ですよage 「地上」は、香川京子の出番が中途半端でもったいない 昨日、NHK BS-2で宮川一夫特集やってたけど、吉村監督とは
たくさん組んでるのに名前出してもらえなかったな。
(「夜の河」は映像で流れてたけど)
まぁ、これも一般的知名度の差なのかな。
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