https://digital.asahi.com/articles/ASPB4663MPB4ULBJ01S.html

「温度センサー」は、単に温度を感じるだけでなく、
やけどや凍傷などの危険を避けるための情報を脳に伝え、命を守る役目もある。

ジュリアス氏らの研究チームは1997年、唐辛子の成分「カプサイシン」に反応するセンサーを見つけたと報告した。

これは43度以上の熱にも反応したため、温度センサーの一種であることがわかった。
このセンサーは、舌などにある神経細胞の細胞膜に埋め込まれている。

センサーの入り口はふだん閉じているが、カプサイシンや43度以上の刺激で開く。
すると、神経細胞が興奮し、熱さの情報が伝えられる。

その後も、温度センサーは続々と見つかった。
爽快感を出す目的で食品や入浴剤に入っているメントールや約25度以下の低温で反応するセンサーも発見された。

パタプティアン氏はさらに、細胞の表面を細い針でつついたときに反応する「触覚センサー」を見つけ、
圧力を感知することを突き止めた。
このセンサーは、ものに触れたとき以外にも役立っている。

たとえば膀胱(ぼうこう)にたまった尿や、消化器官の中にある食べ物の量を感知するのにも必要だ。
センサーを持たないマウスは、気管内部の空気量がわからないため、呼吸を調節できない病気になる。

2人の発見は、慢性疼痛(とうつう)など、さまざまな病気の治療法の開発に役立てられているという。

ジュリアス氏の下で博士研究員として研究した生理学研究所の富永真琴教授は
「熱によってイオンチャンネルが活性化するのを見たときは、長い科学者人生で一番感動した。
授賞対象になった仕事に貢献でき、科学者としてこれに勝る喜びはない」と喜んだ。