月刊WiLL2020年12月特大号
■藤井厳喜
マルクス主義でなければ大学に残れない
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「藤井さん、崔岳を退職してから、やっと言いたいことが言えるようになったよ」
 これは朝鮮研究の大家、元筑波大学教授の古田博司先生が私にかけた言葉です。
   …(略)…
 少し、私の話をします。千葉大学の教養学部にアメリカ政治研究という講座が新設されました。ずいぶん、昔の
話です。私がアメリカでの政治研究から帰ってきたころ、千葉大学の先生が「千葉大学で新しく講座をつくるから、
藤井さんに応募してほしい」と推薦していただき、私はその公募に申し込みをしました。数人の先生が集まる
選考委員会は、私を選んでくれて、私もその気になっていました。
 しかし、最終決定権は選考委員会にはなく、教授会にありました。教授会は私が千葉大学で講座を持つことを
否決したのです。
 私を推薦してくれた先生からは謝罪の電話をいただきました。「藤井さん、恥をかかせて本当に申し訳ない。
千葉大学の教授は東大出身が多くて、みんな左翼なんだ。藤井さんがアメリカの政治を研究しにアメリカに行った
ということが、マイナスに響いたのだと思う……」と。
 アメリカの研究をする人間は、反米でなくてはならない――こんな時代遅れの思想が、大学の教育人には蔓延っ
ていたのです。
   …(略)…
 それは「マルクス主義を礼賛しないと学内での出世が不可能」という歪んだ構造に原因がありました。大学では
助手→助教授→教授と出世していきますが、助手になるのが非常に難しいという側面があります。大学のトップが
リベラルで固められているので、リベラルに沿った言動をしないことには、助手になることすらできないのです。
(続く)