>>133
夕方、部長に呼ばれる。
「これからちょっと付き合わないか」

俺は渋々付き合う。
マッチョのMVPで受けたショックからまだ立ち直れていない。
業績報告に納得できなかった俺は経理伝票とひっくり返して調べた。

華々しい俺の受注の陰で、確かにマッチョは規模は中程度ながら
コンスタントに契約を 重ね、総額では一歩俺を抜いていた。
奴がMVPに選ばれたのは当然と言うことになる。

最も多く売り上げた者がMVPとして表彰され、多額のボーナスを得る。
それが会社の掟だ。

だが、なぜ奴が・・・
数ヶ月前には業績最下位で串焼きの刑に処せられたあいつが、どうして
ここまで 持ち直すことができたのか・・・
タクシーの中で繰り返し自問する。

「ここだ」部長に目的地に着いたことを知らされ、我に返る。
埠頭の側の倉庫街にある何の変哲もない倉庫の入り口だ。

ドアの脇には上下黒ずくめの、やばい雰囲気を身に纏った男が立っている。
男は部長に会釈し、鍵を差し込んでドアを開ける。