【お前ら、警察官は最高だぞ!】

夏場、市内でも有数のボロアパートの住人を名乗る人から電話が入る。

「隣の部屋から異臭がする」

二度目の現場臨場なら、その時点で何の臭いかはわかる。
管理人から鍵を受け取り、ドアを開ける。
目に飛び込むのは風景ではなく刺激臭。一生飯が食えなくなるのではないかとさえ思える。
2秒後、飛び込んでくるのは、おびただしい数の蝿。まるで巨大なアメーバのように蠢いている。
中に進もうとする意思と、拒絶する本能が闘う。

ハンカチで口を覆い、靴のまま中へ。そこに溶けた物体が横たわる。
飛びそうになる意識を押し留め、所轄に連絡。ブルーシートと応援を要請。急ぎ窓を開け換気。

応援到着後、写真を撮った後、溶けて猛烈な臭いを放つ物体をシートに詰める。
あの感触、物体が持つと崩れる様は夢にまで出てくる。
何も考えないことを意識し、淡々と処理をする。虫が手を這おうが、怪しい体液が顔に飛ぼうが…

作業を終え、シートに詰め遺体安置所まで運ぶ。腐乱した物体と一緒にドライブ。
仕事を終えても何も考えられない。体に臭いが染み付いて一生取れない気さえする。
寝ても覚めても疲れは取れない。そんな状況で衝撃の事実を知る。

昨日の通報は非番の先輩が自分が処理したくないために、わざわざ行ったことを…
こんな思いを人生で何度経験するのか。考え出したら自殺への第一歩。