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「般若」とは、サンスクリット語の「プラジュニャー」を音写して漢字をあてた言葉で、「言葉にならない智慧」という意味です。
「般若」は大乗仏教の重要な概念です。
「般若経」とは、智慧とは何か、そしてそれを得るためには、どのように修行したらよいかが書かれた経典です。

日本で一般的に用いられている『般若心経』は、『西遊記』のモデルで知られる、玄奘三蔵が7世紀にインドから持ち帰って漢訳したものです。
『般若心経』は、禅宗をはじめ日本の多くの宗派で重視され、唱えられています。
真言宗の空海、曹洞宗の道元、臨済宗の一休宗純などが注釈したり論じたりしています。

「色即是空」の前後を含めた漢訳原文と現代語訳を紹介

『般若心経』の始まりの部分の原文と現代語訳を紹介します。
現代語訳はその解釈によってさまざまに訳されていますが、一般的でわかりやすい訳文にして紹介します。
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観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是

観自在菩薩は般若波羅蜜多の行によって、「五蘊」がすべて「空」であることを悟り、それによって生まれる一切の苦厄は実体のないものであると見抜いた。
舎利子よ。物質は「空」と異なるところはない。
「空」は物質と異なるところはない。
物質すなわち「空」であり、「空」すなわち物質である。
これと同じように、感覚も、表象も、意思も、知識も、すべて実体がないのである。
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※「五蘊(ごうん)」とは、人間の心的作用である「識・行・想・受」と、形ある肉体「色」のあわせて五つからなる人間の構成要素のことで、仏陀(釈迦)が説いた概念です。
「蘊」とは集まりを意味します。

※「舎利子(しゃりし)」というのはシャーリプトラという仏陀の十大弟子のひとりで、『般若心経』は仏陀にかわって観音菩薩がシャーリプトラに語りかける形式で書かれています。

』の冒頭では、「五蘊」が存在しないと否定しますが、さらに続いて世界の構成要素として仏陀が分析した「十八界」も存在しないと否定します。
十八界とは、人間が外界を認識するための眼や耳などの器官と、それらによって認識される味や触などをあわせた総称です。