認知症ねっと 第8回 認知症の妄想

人物誤認にかかわる妄想症候群

人物誤認に関連した一連の妄想群を妄想性人物誤認症と言い、認知症によく見られます。
この症候群の中には、「カプグラ症候群」「幻の同居人」「鏡徴候」「TV徴候」などの
症状があり、認知症に見られることが多いのです。

「カプグラ症候群」は、「自分の身近な人間がそっくりの他人にすり替えられてしまった」
と確信する妄想で、1923年にカプグラCapgrasらが「自分の娘が何人もいて替え玉として
周囲のさまざまな人にすり替わっている」と確信していた53歳の女性の症例を報告し、
このような妄想をカプグラ症候群と名付けました。当初は、「替え玉錯覚」とも言われ、
女性に特有で統合失調症、妄想症、感情病などの症状の一つとされましたが、現在では
認知症の人をはじめ脳に障害のある人にも出現することが知られています。

「幻の同居人」は他人が自分の家に住み込んでいると確信する症状で、訴えとしては
「○○が部屋にいる」「子どもが沢山いる」など、と訴えます。この場合、それが幻視
なのか、あるいは妄想性の誤認症なのかの鑑別が困難なこともあります、「幻の同居人」
の場合は、姿はみていないが「確かに家にいる」と確信し、いくらそのような人はいない
と説明しても「居る」と確信します。

「鏡徴候」は、鏡に映った自己像を自分自身と認識できず他の人間と取り違えるために、
鏡に向かって話しかけたり、食べ物を与えようとしたりする行動です。この徴候の特徴と
して、重度の認知症高齢者にみられることが多く、鏡の中の自分が認識できないために
鏡を見てそれを他人と誤認してしまいます。

TV徴候は、テレビの場面を現実のものと取り違える状態で、TVの出演者と会話したり、
TVに向かって大声で怒りを露わにしたりします。