「ミスタージョージア」第2部@
作.手ぶらの乞食

身寄りもなく、荒んだ生活をしていた一郎は、末期癌に蝕まれヤケになっていた。

そこへ目を付けたのがNASAだった。
NASAの手により、一郎の癌に侵された身体は除去され、頭部は機械に埋め込まれた。

機械は調度、電子レンジ程の大きさと形で前方は特殊ガラスが張られ、さながらヘルメットを被っているかの様だった。

一郎は、NASAが手掛ける火星居住計画の火星居住機第1号「ミスタージョージア」として、このミッションの一大プロジェクトのメンバーに大抜擢されたのだった。

このチームを率いるのは人工工学の第一人者カーネル博士だ。

カーネルは言った「ミスタージョージア…君は人類の希望だ。胸を張って火星に行って来なさい。いいね?」

「いやいや、胸も何もあったもんじゃねーだろ?頭しかねーんだからよ。
まぁ、あんたらが熱いのはよく分かったがヤクザもんのオレが火星に行って何すりゃいいんだよ?」

カーネルは人さし指でメガネをクイッとあげて言った。
「住んだ感じだ…。それが最も重要だ。キュリオシティーなどの探査機では知り得ない住み心地はどうなのか?
大切なのは人の心だ。その代表がミスタージョージア君なのだよ」

「それだけかよ!!動けやしねーし退屈な任務だなそりゃ。タイヤか何か着けれねーのか?せめて散歩程度の事くらい出来ねーとストレス溜まるぜ?」

「残念だがそこまでの進歩は無い。今の科学ではね。しかし、すぐに2号、3号と続く予定だ。その頃には技術も向上して手足の着いた可動式も夢じゃない。それまで仲間を待つんだ。
彼らのパイオニアとなってくれ。
あの侍、野茂英雄の様に。
いいね?」

ミスタージョージアはロケットの先端部に装着された。
いよいよ明日、ロケットは打ち上げられる。

人類の希望を乗せて………。

つづく。