やぁ、諸君らおはよう。

あなたがたは崖っ淵で躊躇している。

後ろを振り返れば豊かな大地に暖かな家があり何不自由のない暮らしがある。

前を向けば崖の先にジャンプ台が設置してあり、その眼下には仏の大海が荒波を立てている。

家に引き返す者、立ち尽くし唱える者、自ら勇気を持ってダイブする者、様々だ。

ある男は、逃げ回り、追いつめられ、ジャンプ台にしがみ付き、もがき苦しんでいた「もうダメだ!一貫の終わりだ!」それとは知らず否応なしに手を放した。

仏の大海にダイブしたとも知らずに。

男の中で何かが死んだ。

気が付けば男は公園のベンチに座っていた。

辺りを見合わせば、普段から見慣れている筈の公園はまるで違って見えた。

「なんだ?これは…」

ブランコもすべり台も木々たちも空も電線も見るもの全てが生き生きと輝いていた。

何も変わらずに全てが変わった。

鮮烈な生がただ、そこにあった。

男はブランコに囁いた。

「やぁ、おはよう」

男は何も変わらない日常の中へと消えて行った。

ダイビング仏陀「ダイ仏」の寓話である。