無門関(むもんかん) 第三十七則 庭前柏樹 (にわさきのかしわのき)ていぜんのはくじゅ

修行僧が聞いた。「達磨がインドから来た理由は何でしょうか」

和尚が答えた「庭の柏の樹だ」

無門関(むもんかん) 37則: 庭前柏樹   

本則

趙州(じょうしゅう)、因(ちな)みに僧問う、「如何(いか)なるか是(こ)れ祖師西来(せいらい)の意(い) ?」

州云く、「庭前(ていぜん)の柏樹子(はくじゅし)」。



趙州:趙州従シン(じょうしゅうじゅうしん)(778〜897)。唐代の大禅者。

南泉普願(748〜834)の法嗣。趙州観音院に住んだので趙州和尚と呼ばれる。

法系:六祖慧能→南嶽懐譲→馬祖道一 →南泉普願→趙州従シン

祖師西来(そしせいらい)の意:
「祖師達磨がインドからはるばる渡来した(西来(せいらい))その意味はどこにあるのか?」という質問を通して禅の本質を問う常套的な言葉。

柏樹子(はくじゅし):子は助辞。

趙州従シン禅師がいた趙州観音院には柏の木(柏樹子(はくじゅし))が多かったと言う。ただし、この柏は普通の柏ではなく柏槙(びゃくしん)をさす。

柏槙はヒノキ科ビャクシン属の高木。糸杉に似た常緑樹で、幹は桧に似て赤く縦じまが美しい。


現代語訳

本則

趙州和尚にある僧が尋(たず)ねた、「達磨大師(だるまだいし)がはるばるインドからやって来た意図は何ですか ?」

すると趙州は庭を指差して云った、「あの柏の樹じゃ」。

〇 師弟が座敷に坐っています。
  子の修行僧、永い年月を師のそばに合って修行をしてきました。
  そこで、真理とは何でございますか、と真っ向上段に振りかぶって切り込んでいきます。
  師は、真理とはどこかにあるんじゃないよ、お前も私も見ているあの柏の木が、それだよ、と答えました。
  修行僧、省(せい)あり。(さとりました)

関東の人にはおなじみでしょうが、天狗が出ると言う今ではロープウエーでも登れる高さ800メートル高尾山と言う山が有ります。
この高尾山と富士山はどちらも同じ高さである、と受け取る人はさとった人なのです。

正師と書いて 笑止 と詠む。教師は狂師。