縁起を語るときのナーガールジュナの特殊な言い回しに注意しなければなりません。
かれは、それまでの、

これあるに縁りてかれあり。
これなきに縁りてかれなし。

という言い方を、つぎのような、言い方に換えています。

かれなきに縁りてこれなし。
これなきに縁りてかれなし。

無明に縁って行があり・・・ 無明の滅によって行の滅がある。

という伝統的な縁起の表現を、ナーガールジュナは、

行がなければ無明も生じないし、 それ(無明)がなければ行も生じない。(空七十論 11)

というふうに、表現しています。


A : 食べ過ぎ(X)によって、腹痛(Y)が起きる。
を、ナーガールジュナふうに言い換えると
A’: 腹痛(Y)がないことによって、食べ過ぎ(X)が起きない
となります。
この場合、AとA’は、あきらかに全く別のことを言っているので、このような言い換えをすることはできません。

ところが、もし、縁起を論理的関係を示しているものとナーガールジュナが解釈していたと仮定すると、
そのような言い換えが可能であったことがわかります。
たとえば、

B : もし食べ過ぎる(P)ならば、腹痛が起きる(Q)。
を、ナーガールジュナふうに言い換えると
B’: もし腹痛が起きない(〜Q)ならば、食べ過ぎではない(〜P)。
となります。

面白いw