■裁判制度の悪用

 立花氏の反応は早かった。動画投稿サイトに登場し、記事の内容を虚偽だと断じた上、名誉毀損で提訴すると宣言。10万円の懸賞金をかけ、記事を書いたちだいさんの「本名と住所を募集する」とも呼び掛けた。

 その後、記事中の2カ所の記述についてそれぞれ、訴訟を起こされた。うち1カ所の記述については、N国と立花氏が原告となり「名誉を毀損された」として計210万円を賠償請求。今も係争中だ。

 もう1カ所の記述を巡る訴訟の原告は、N国の久保田学・東京都立川市議。「久保田氏が立川市に居住実態がほとんどない」とする記事が選挙妨害で名誉毀損として、200万円を請求された。

 ところが、訴えた久保田氏側は審理で、公共料金の領収書など居住実態を裏付ける十分な資料を求められても提出しない。
ちだいさん側の反論の書面すら「まともに読んでいない」と発言。19年5月には訴訟を取り下げると言い出した。

 ちだいさんは、久保田氏側が裁判を最後までやる気がなく、提訴は手段にすぎないと感じた。
「提訴によって経済的、心理的な負担を課し、言論活動を弾圧する目的だった」として、久保田氏に約120万円の賠償を求める反訴を起こした。

 9月19日の千葉地裁松戸支部判決は、久保田氏の提訴が「裁判制度の目的に照らして著しく相当性を欠く」と指摘。裁判制度を悪用したとして、久保田氏に約75万円の支払いを命じた。
一方、久保田氏が原告の訴訟は請求棄却。ちだいさんの勝訴となった。

 判決は、立花氏が5月に動画投稿サイトで「この裁判は、勝ってちだい君からお金をもらうためでなく、経済的ダメージを与えるためのスラップ訴訟だ」と発言したことも踏まえていた。