虚業教団
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彼は大川に、この話はなかったことにしてほしいと訴えた。

大川のワンマン体制下では、その意向に逆らえば、会から追放されても文句は言えなかった。

よほど勇気が要ったに違いない。

なにしろ仏陀の指示を拒むのである。

阿南浩行は自分の心に正直にしたがった。

たとえ全知全能の神の命令でも、自分がおかしいと感じたら、やはりおかしいのではないか。

彼は自らの行動で、そのことを私たちに問いかけたのである。

けれど私たちはまだ自分の〔浅はかな考え〕よりも、大川の霊言を信じていた。

「神は自分の心の中にある」と高橋信次は繰り返し説いた。

そういう心の中の神を、真っ直ぐに見つめることのできた人間から、順番に会を去っていった。

「明日から出社におよばずだ!もう出てくる必要はない!」

大川の憤慨は、私たちも はじめて見るほど激しいものだった。

「佐藤家を訪問したというのは、すでに承諾したと同じではないか。

相手に正式に結婚の申込みをしたということだ。今さら断れない!」

六大神通力を持つはずの主宰先生が、怒りのためにその能力に曇りが生じたのか、すでに阿南は真知子の実家へ挨拶にいったものと勝手に思い込んでいた。

「神託結婚を承諾できないのは、高級霊からの霊言が信じられないということだ。

これだけの本(当時は60冊)を認めないと言っているんだ。

信仰心がなってない!」

「自惚れている。大したこともできないくせに!」

局長会議が頻繁に開かれた。

そのたびに、私たちは、主宰先生の〔不調和な言魂の響き〕を耳にしなければならなかった。