大企業のトップや国政政党といった強大な力を持つ人間や組織が、ある日突然、あなたを裁判に訴えてきたら…。

 この「力の差」を悪用し、力を持つ人が持たない人に圧力をかける目的で起こす裁判がある。「スラップ(SLAPP)」だ。
裁判の本来の目的から外れ「裁判の名を借りた嫌がらせ」であるため、米国の多くの州では規制されている。

 スラップの狙いは、特に「表現の自由」を萎縮させること。自分の意に反する主張をする人に、巨額の賠償を求めて黙らせようとする。日本でもこの種の裁判が起きている。

 ■このやり方は

 N国は、7月の参院選で党首の立花孝志氏が初当選し、地方議員も次々誕生した。動画投稿サイトを中心にした発信で支持を広げる一方、タレントのマツコ・デラックスさんら批判者を提訴すると宣言し、物議を醸した。

 今、このN国のやり方が、スラップではないかと関心を集めている。N国の地方議員に提訴されたネット記者の男性の裁判から、その危険性を考えた。

 ちだいさんは、選挙戦の様子や動画投稿サイトなどをチェック。批判的な記事を書き続けた。

 そんなちだいさんの元に、ある日訴状が届く。18年6月、千葉県松戸市長選に関する記事を巡り、N国に裁判を起こされた。

 ちだいさんによると、経緯はこうだ。松戸市長選に出馬したN国の候補の街頭演説を、他のフリー記者らと取材した。
その際、フリー記者2人が候補に公約を尋ねたが、候補は答えられなかった。すると、その様子を見ていた立花氏や他のN国の地方議員が激怒して2人に暴行した。

 ちだいさんが一部始終を記事化し、「N国の地方議員や立候補者に議員の資質はない」と批判した。