宝島30 30’s news chatより(高橋手記とは別)

後にポストモダンと呼ばれるようになるこうした「80年安保」の思想がバブル時代の都市の若者の行動規範を
つくっていったのである。定住よりも遊牧を、安定よりも逃走を説く浅田彰の「構造と力」がベストセラーに
なったのも、まさしくこうした時代を背景としている。


1980年当時、「現代思想」と「遊」は文字通り、双子のような雑誌だった。そして、こうした流れの中から
生まれたポストモダン思想のヒーローが浅田彰とするならば、精神世界のヒーローは、言うまでもなく
若き宗教学者・中沢新一だった。チベット密教を通じて精神世界の中に”ほんとうのもの”を発見した中沢氏の
デビュー作「チベットのモーツァルト」は加速度的に進行する相対主義の中で、
もはやどこにも信じるに足るものなど残されてはいないと考えていた「80年安保」世代に大きなショックを与えた。
終わりなきニヒリズムを生きるか”ほんとうのもの”を探す旅に出るかの岐路に立たされていた若者たちの中に、
中沢氏の著作に触れて、精神世界に新たな生の可能性を求めるものたちが生まれた。