ルサンチマン

ニーチェのキリスト教批判における中心概念で、「恨み」や「妬み」を意味する。
『道徳の系譜』(1887年)において、ニーチェは、キリスト教の起源をユダヤ人のローマ人に対するルサンチマンに求め、
キリスト教の本質はルサンチマンから生まれたゆがんだ価値評価にあるとした。
被支配階級であるユダヤ人は、支配階級であるローマ人の力強さ、能動的に生を楽しむこと、自己肯定的であることに対して恨みや妬みを抱き、
このルサンチマンから、強い者は「悪い」、強くない私は「善い」、という屈折した価値評価を作り出した。
この価値の転換はさらに屈折の度合いを深め、「貧しき者こそ幸いなり」ということばに代表されるような、
弱いこと、欲望を否定すること、現実の生を楽しまないことこそ「善い」とする価値評価が生まれ、
最終的にキリスト教の原罪の考え方、禁欲主義、現世否定主義につながっていった、とニーチェは考えた。