遠いまなざし 押田 成人 地湧社 (1983)

II 生き方を知るための基本点 
理念ことばとコトことば

「言葉といいますとね、現代人、現代の教育を受けた連中は、みなヨーロッパ的に
なっていてー悪い意味でのですよ、良い意味でのヨーローパ的ではなくてー理念的な
言葉、意味の言葉、そういうものだと思っちゃうんですね。言葉というものは説明の
ためにあるという感じになってくるわけです。それは一種の言葉であって、表面層の
言葉なんです。そういう言葉の奥に、日本語でいうこと、「言」というか「事」というか、
コトことばというのがあるんですね。コトことばがなければ、この理念的なことばは
意味がないんです。
 学問というのもそうなんです。理念ことばでいろいろ発見を説明しますが、その根本
にあった発見というのはみんなコトことばなんです。どうにも説明できなくて困って
うなっている時に、絶望している時にパッと聞こえてくるある一つのことなんです。
事件なんです。だから出会いというのは全てコトことばなんです。
 そして話している時でも、説明して出会うなんてことはありません。何か語る言葉が、
コトことばであるから出会うんですね。その人の存在の事件を響かせるから出会うん
ですね。そこのところが大事なことですね。だから話している言葉だけじゃないん
ですね。その人の後姿も言葉なんです。」

上は、「ヨハネによる福音書」に深くつながっていると思われますので、引用をしました。