ウィキペディアより

もはや死ぬる覚悟をして居まして、その時思いますは、
はれやれぜひもない事じゃが、別に残り多い事は無けれども、
ただ平生(へいぜい)の願望成就せずして死ぬる事かなとばかり思うていました。
おりふしにひょっと、一切事は不生でととのうものを、
いままで得知らいで、さてさて無駄骨を折ったことかなと思い居たで、
ようようと従前の非を知ってござるわいの。
(もう死ぬ覚悟をして思うことは、「ああ、是非もないことだが、
別に残り多いことはないけれども、ただ常日頃の願望が成就しないまま死んでしまうことかな」とばかり思っていました。
ところがその時ひょっと「一切事は不生で整うのに、今まで知ることができないで無駄骨を折ったことよ」と思い、
ようやくこれまでの間違いを知ったわけです)