死にたい老人 (幻冬舎新書)[Kindle版]
木谷恭介 幻冬舎 2012-09-14 餓死への挑戦の記録

・(断食5日目)断食をはじめて、まる4日しか経っていないのに、体力の衰えが想像した異常に激しい。こんなに早く、体力が衰えるとは…。
・(断食15日目)胃の疼痛が激しい。朝から医者へ行くか行かないか、迷っている。

・(断食23日目)薬を飲むと胃が痛い。医師に相談することもできない。といって、このままほうっておくわけにもいかない。意を決して、かかりつけの医院へ行く。医師は「本気でやってたのですか」と、血相を変えた。

・(断食24日目)昨日、医師から聞かされたケアハウスは、気持ちがおおきく動いた。
いや、90%ぐらい、そうしようという気持ちになっていた。ぼくのことを気遣って、3とあけずに電話をくれる友人が2人いる。その2人に電話で、「断食」をギブアップした。ケアハウスへはいる気持ちになったことを告げた。

・断食安楽死を決意してからというもの、周囲の人に迷惑をかけっぱなしであった。
死んでいくぼく自身はいいが、それを知っていて警察に通報しなかった人は「保護責任者遺棄致死」の罪に問われる。

・(82歳2ヶ月のとき)生身の女性と肌を寄り添わせているのに、勃起しなくなった。生まれてはじめての出来事であった。いつかくると予期していたことだからショックはなかったが、ぼくの人生は終わったという寂しさをもった。

・(再度の挑戦にあたって)ぼくは自宅で断食安楽死をすることができなくなった。(中略)見に来た途端に、保護責任者になってしまう。
119番通報しなければ遺棄致死に問われるし、されると、ぼくは断食半ばで挫折。ぼくはお手伝いさんたちに"行く先は秘密"で、引っ越しをせざるを得なくなった。
つまり、ぼくの身辺のひとたちに、どこへ引っ越したのかわからないようにことを運ばないと、迷惑をかけることが明らかになったのだ。

・ぼくには孤独死した友人が4人いる。ひとりはぼくより年上の吉村平吉さん。浅草通の酔狂なひとで、亡くなったとき84歳であった。
もともと、平さんは"酔生夢死"をモットーにしていたし、年齢に不足もない。だが、あとの3人は全員30代であった。孤独死は年寄りの専売特許ではない。