>>265

本則
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道吾と漸源と一家に至って弔慰す。
源、棺を打って云く、「生か死か?」。
吾云く、「生ともいわじ死ともいわじ」。
源云く、「なんとしてかいわざる?」。
吾云く、「いわじ、いわじ」。
回って中路に至って源云く、「和尚、すみやかにそれがしのためにいえ、もしいわずんば和尚を打ち去らん」。
吾云く、「打つことは即ち打つに任すも、いうことは即ちいわず」。
源すなわち打つ。

後に道吾遷化す。

源、石霜に至って前話(ぜんな)を挙似す(こじ)。

霜云く、「生ともいわじ、また死ともいわじ」。
源云く、「なにゆえにかいわざる?」。
霜云く、「いわじ、いわじ」。
言下(ごんか)に省(せい)あり。

源、一日、鍬子(しゅす)をもって法堂上を東より西に過(わた)り、西より東に過ぐ。
霜云く、「なにをかなす?」。
源云く、「先師の霊骨(れいこつ)を求む」。
霜云く、「洪波浩渺、白浪滔天、なんの先師の霊骨をか求めん?」
雪竇著語して云く、「蒼天(ああ)、蒼天(ああ)」。
源云く、「正(まさ)に好(よ)し、力を着くるに」。
太原の孚(ふ)云く、「先師の霊骨猶(な)お在り」。



道吾:道吾円智(769〜835)。薬山惟厳(782〜841)の法嗣。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷→薬山惟儼→道吾円智
漸源:漸源仲興。道吾の弟子で、後道吾の法嗣となる。
石霜:石霜慶諸(807〜888)。道吾の法嗣。
太原(たいげん)の孚(ふ):孚上座(ふじょうざ)(822〜908)。雪峰義存の法嗣。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷→天皇道悟 →龍潭崇信→徳山宣鑑→雪峰義存 →孚上座