嘲笑、不潔物、乱暴、髪、よろめき

【イエズスの場合:十】

かれらは主に向かって嘲笑い、つばきをかけ、罵倒し、不潔物を投げつけ、浴びせかけ、突き倒し、殴りつけた。
かれらの剣や槍は、広い広い脱穀場の連枷のように振り上げ、振り下ろされた。
そして生命のパンをもってすべての人々を永遠に養わんために地上に降り、死んで一粒の麦となるべき主に対し、あらん限りの乱暴を加えた。

 わたしはイエズスがこれらの恐るべき軍勢の真只中で、実際にかれらの武器で打たれているかのように恐れおののいているのを見た。

 わたしはこの時。血が濃い滴りとなって主の青白い顔を流れ落ちるのを見た。
主のいつも滑らかに分けられた髪は血でこびりつき、乱れ、もつれ上がり、そのひげは血にまみれ、むしり取られたようになった。
主が逃げるように洞穴から出て再び弟子たちの方に行かれたのは、この幻影の後であった。

しかし主の足取りはたしかでなく、重い荷の下に深く身をかがめ、あちらこちらよろめく者のように、あるいは傷におおわれ、今にも打ち倒れそうな者のようであった。