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禅客:雲水。
好雪:みごとな雪。
片片別処に落ちず:雪のひとひらひとひらは別の処に落ちなていない。

本則

ホウ居士が薬山のもとを辞去した。薬山は十人の雲水に命じて山門まで送らせた。ちょうど寒い冬の天気で雪がチラチラと降っていた。
ホウ居士はその舞い落ちる雪を指して言った、「ああ、見事な雪景色だなあ!あの雪は1つも別の処へは落ちていないよ」。
その時に全と言う名の雲水が尋ねた、「一体雪はどこに落ちるのですか?」
その声の終わらないうちに居士は全禅客をピシリと打った。全禅客は「居士よ。何と乱暴なことをなさるのか」と言った。
ホウ居士は言った、「貴様はそんなざまで禅坊主だなどと自惚れていると閻魔さまに舌を抜かれるぞ」。
全禅客は言った、「では、あなたなら、どういいますか?」。
居士はまた全禅客を1つ打って、言った、「お前さんの眼は開いているがまるで盲目のようだし、口はしゃべっているが唖のようだな」。
この全禅客のだらしなさに雪竇はコメントして云う、「わしなら、居士が好雪片片別処に落ちずと言った時、
雪団子でここだと居士の頬をなぐりつけてやったものを!その場にいなくておしいことをしたわい!」


⇒ 美しく舞い落ちる雪と我は、別物ではない。
   
  美しく舞い落ちる雪と我は、一の如しである。

高校生の頃である。
友人二人と、深夜の国道を振り始めた牡丹雪が少し降り積もった車道を、スケーテキングしながら、帰った事がある。
大きな振り分けの強い外套が照らし出す中、スケートの選手よろしく手を左右に振りながら滑っていく。
街灯は、何十メートル化の感覚で、雪のトンネルの中を進むファンタジーである。
不思議と車が1台も透らなかった。
街が白、国道が白、二人も白、だ。