>>281

本則

陳操尚書(ちんそう そうしょ)、資福如宝 (しふく にょほう)に見(まみ)ゆ。

福、来たるを見て、便ち一円相(いちえんそう)を画(か)く。
操云く、「弟子、恁麼(いんも)に来たるすら、すでに便を得ざるに、何ぞいわんや更に一円相を画くとは」。

福、便(すなわ)ち方丈(ほうじょう)の門を掩却(とざ)す。

雪竇(せっちょう)云く、「陳操只(た)だ、一隻眼(いっせきがん)を具(ぐ)す」。



一隻眼(いっせきげん):坐禅修行によって得られる常人を超えた第三の眼。
一円相(いちえんそう):本来の面目、仏性、などを円形で象徴的に表現したもの。南陽慧忠国師(645〜775)が元祖だとされる。
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本則

ある時陳操尚書が資福寺を訪れた。
資福は陳操が来たのを見て、空中に一円相を画いた。
陳操は云った、「私は今来たばかりで、まだ挨拶もしていません。それなのに、私を試すかのように、いきなり一円相を画くとは何事なのですか」。

資福は陳操に一円相を画いて、これが分かりますかと、日頃ぼんやりと見える陳操の禅の力量を試そうとしたが見破られてしまった。
そこで資福はきまりが悪いのか自分の部屋に入り戸を閉めて引きこもってしまった。

雪竇はコメントして云った、「陳操は常人を越えた眼を持っている」。