私は今井夫人がなぜ谷口氏と一緒にいるのかと怪訝に思いなが
ら、二人の前に座り、お辞儀して顔を上げた時、あっと叫びまし
た。今井夫人と思っていた人は輝子夫人だったのです。その叫び
声は小さくとも、静かな部屋で六尺と隔たっていない二人に聞こ
えないはずはないのですが、お二人は無言で平然と座っておられ
ました。

 私はその場の冷たい、とりつくしまもない、叱られていでもい
るかのような空気に耐えかねる思いでいましたら、谷口氏は突然
、私に向かって

 「大本は大正10年に世の立て替えがあるといいましたが、今に
鳴っても何も変わったことはありません。今、綾部に移住の信者
たちはその立替を信じて来ている人が多数います。ある人は学業
を半ばで放棄し、あるものは仕事もやめて、大正10年を目標に来
ているのです。その人達は今生活が出来ず困っています。大本は
間違いであったと天下のあなたの名前で謝罪してください」