東大論文不正 倫理欠如を想定、抑止策「性悪説」に転換

8/12(土) 7:55配信 産経新聞

科学研究の論文不正が後を絶たない。
東京大の分子細胞生物学研究所で起きた不正は、STAP細胞問題で揺らいだ科学への信頼を再び脅かした。
大学は防止策をすり抜ける形で不正が再発したことを重く受け止め、「性悪説」への転換で対策の抜本的な見直しを迫られている。

◆時代遅れの認識
東大は1日、同研究所の渡辺嘉典教授らが平成20〜27年に発表した論文5本について捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)を認定。
実験結果を示す画像のコントラスト(明暗)を過度に調整するなどの改竄があったとした。

「データを美しく見せようとしたのだろう。画像の扱いに関する知識がなく、昔は通用したことをそのままやっていたのでは」。
渡辺氏の研究室に在籍していた研究者はこう推測する。

画像加工は都合のよい結論を導くのを防ぐため国際的なルールがある。
その許容範囲はデジタル技術の進歩とともに変化しており、渡辺氏の認識は時代遅れになっていたとの見方だ。

渡辺氏は産経新聞の取材に「一般に論文でコントラストは強めにしたことは認める。論文の結論に影響しなければ不正ではないと考えていた」と説明した。

だが大学側は結論に影響するかを問わず、最新の国際ルールに従っていないとして不正と判断した。
渡辺氏は論文を修正したい考えだが、掲載した科学誌との協議次第で「撤回する可能性はある」としている。