(ヒルテイ24−9)
「神の慎重な、ゆるやかな導きは自らそれを体験しない限り誰もが信じがたい、最も不思議な経験の
一つである。それはいつも苦痛と不安とを通して行われるのである。人は絶えず、自分の所有する一
切のものをささげ、特にこれだけは本当に自分のものと言える自己の遺志さえをも完全に神にゆだねる
覚悟をしなければならない。そうすると突然、新しい段階が開けてくる。この段階に立つと自分が幸
福な道を選んだこと、そして今や一つの新しい自由が、しかも永遠に増し与えられたことが明白にな
る。」(「眠られぬ夜のために第一部」より)

ここでは(ヒルテイ24−7)で触れたパウロの信仰体験をより深く解説しているかのようです。
「自分の意志さえも神にゆだねる」との言葉は禅宗で言う「心身脱落」あるいは「自己放擲」に通じ
るものがあるように感じます。