碧巌録(へきがんろく) 第七十九則 投子(とうす)の一切聲

試(こころ)みに挙(こ)す看(み)よ

投子に問う、一切の聲は是れ佛の聲と、是なり否。
投子云く、是なり。

云く、和尚、沸碗鳴聲すること莫れ。
投子、便ち打つ。

又た問う、言及び細語、皆第一義に歸すと、是なり否。
投子云く、是なり。

云く、和尚を喚んで一頭の驢と作して得しきや。
投子、便ち打つ。


第79則? 投子一切声仏声  
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試(こころ)みに挙(こ)す看(み)よ

僧、投子(とうす・投子大同禅師) に問う、「一切声はこれ仏声と、是なりや否や?」。
 投子云く、「是なり」。
僧云く、「和尚 トク沸碗鳴声すること莫れ」。
投子すなわち打つ。
又問う、「粗言(粗雑な発言) および細語(丁寧な言葉)、みな第一義に帰すると、是(ぜ)なりや否(いな)や?」。
 投子云く、「是なり」。
僧云く、「和尚を喚んで一頭の驢(ろば)となして得(よろ)しきや?」。
投子すなわち打つ。

トク沸碗鳴声(とくふつわんみょうしょう):ブツブツと湯気をふき出す碗の音、無意味な発言の喩え。