>>35
?
本則
?
ある日、道吾円智は弟子の漸源を連れ、死者が出た家に弔慰に行った。
未だだ修行中の身であった漸源はその家に着いてお悔やみをした。

その時漸源は棺を打って、「この中の人は生きているのですか、それとも死んでいるのですか?」と師の道吾に尋ねた。。
道吾は「生とも言わないし、死とも言わない、死人は死人でありのままだ」と答えた。

漸源「どうしてはっきりと教えて下さらないのですか?」。
道吾「言わない、言わない」。

お悔やみを終わって寺へ帰る途中、漸源はまた先ほどの質問を蒸し返した。
漸源「和尚、先ほどの質問に早く答えて下さい。もし教えてくれなければ和尚をなぐりますよ」。
道吾が「なぐりたければなぐっても良いが、言わない」と言うのを聞いて、漸源は道吾をなぐった。
後に道吾禅師は死去した。漸源は兄弟子の石霜のところに行って、この話をした。
石霜は「生ともいわない、また死ともいわない」と言った。

漸源「何故言わないのですか?」。
石霜「いわない、いわない」。

漸源は、この言葉を聞いて悟るところがあった。

漸源はある日、鍬(くわ)をもって法堂上を東より西に過(わた)り、西より東に行った。
石霜は「なにをしているんだ?」と聞いた。
漸源「道吾禅師の霊骨を捜しています」。

石霜「ナニ道吾禅師の霊骨だと! オイここは怒涛逆巻く大海原の真っ只中だ。そんなものは無いわい。」
雪竇はこの55則を編集しながらここで思わず著語して言った、「蒼天(ああ)、蒼天(ああ)」。
石霜の言葉に対し漸源は「その無い骨を掘り出すために努力するまでさ」と言った。
雪峰義存の法嗣太原の孚上座はこれを評し、「先師の霊骨はここにあるぞ」と言った。