碧巌録(へきがんろく)  第53則?百丈野鴨子(ひゃくじょう やおうず)
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挙(こ)す
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 馬大師(馬祖道一)、百丈(百丈懐海)と行くついで、野鴨子(雁)の飛び(す)過ぐるを見る。

  大師云く、「これなんぞ?」。
 丈云く、「野鴨子」。

大師云く、「いずれのところにか去る?」。
  丈云く、「飛び過ぎ去る」。

  大師ついに百丈の鼻頭をひねる。丈、忍痛の声(痛みをこらえきれずに発する声) をなす。
  大師云く、「何ぞ曽(かっ)て飛び去らん」。
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本則
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 百丈が師である馬祖と一緒に道を歩いていた。その時野鴨子(雁)の1群が空を飛んでいるのが見えた。
  馬祖「あれは何だ?」。
 百丈「雁です」。
  馬祖「どこへ飛んで行くのか?」。
  丈云く、「もう飛んで行ってしまいました」。
  すると馬祖は不意に百丈の鼻柱を引っつかんで捻り上げた。余りにも痛いので百丈はオウオウと泣き始めた。
  馬祖「飛んで行ったと言うが、まだここに居るではないか!」。
この時百丈は冷や汗を流して悟った。
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〇 而二不二 ににふに 不二而二 ふににに である。 しこうして、一如z(いちにょ) である。