>>581

挙(こ)す
雪峰義存が庵に身を潜めていた時、二人の僧が来て礼拝した。
雪峰は二僧が来るのを見て、手の平で庵門を押し開き、パッと飛び出して云った、「これなんぞ?」。「本来の面目」とは。
僧は云った、「これなんぞ?」。
雪峰は、うなだれて庵に帰った。
僧は後に巌頭のところに行った。
巌頭「何処から来たのか?」
僧は云った、「巌南(広東省地方)より来ました」。
巌頭「雪峰のところに行ったか?」。
僧云く、「以前に行きました」。
巌頭「雪峰はどのようなことを言っていたか?」。僧は以前雪峰のところで交わした話をした。
巌頭「その他に何か言ったか?」。
僧「雪峰和尚はだまってうなだれて庵に帰られました」。
巌頭「ああ、残念なことをした。わしが彼に禅の究極のことを言わなかった。もしわしが彼にそれを言っていれば、
天下の人は誰も雪峰老師をどうすることもできないだろう」。
僧は夏の修行期間が終わる頃になって再び前の話をして巌頭に教えを請うた。
巌頭「こんな大事な問題を何故早く問わなかった。今迄一体何をしていたのだ?」。
僧「これは容易ならん問題です」。
巌頭「雪峰とわしは兄弟弟子だがわしとは別人格だ。お前さん、禅の究極の処を知りたいかな。それを一言で言えば、『ただこれこれ』じゃ」。

〇 初関を透る、である。