2005年(主日A年) 10月23日 年間第30主日
出 22:20〜26  Iテサ 1:5〜10  マタ 22:34〜40

「あなたの神である主を愛しなさい」 「隣人を自分のように愛しなさい」 という聖句は、古来キリスト者にとっての金言として広く知られて来ました。
恐らくキリスト教の歴史の中で、各時代が独自の解釈をこの聖句に与えて来たに違いありません。
近代においては、人本主義に基づく博愛の精神を擁護する標語として、キリスト教の枠を超えてすべての世界と神々に適用されるようになったことを、私たちはよく知っています。

マタイ福音書はこの伝承に、「律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている」 という非常に重要な言葉を、いわば解説として加えました。
イエスと使徒たちの理解における当然の前提を、旧約聖書に無縁な異邦の世界から入信して来た人々にも理解させようとしたのだと思われます。
律法(旧約聖書)の要約としてのこの二つの聖句の組み合わせは、すでにユダヤ教の信仰問答書で用いられていたもので、
イエスはそれを引用して、御自分の福音が 「律法と預言者によって立証されて」(ロマ 3:21)実現しつつある “秘められた計画” であることを示されました。

新約聖書の中のある聖句が、その前後関係から切り離されて一人歩きするときに起こる危険性に、現代のキリスト者の注意を喚起しなければなりません。
主イエスも使徒たちも全く意図しなかったような、従ってキリストの福音と何の関係もない解釈や主張が、現代の教会を取り巻いているからです。