碧巌録(へきがんろく)  第35則?   文殊(もんじゅ)前三三(ぜん さんさん)     
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挙(こ)す、
文殊、無著(むじゃく)に問う、「近離(きんり)いずれの処(ところ)ぞ?」。
無著云く、「南方」。
殊云く、「南方の仏法、如何(いかん)が住持(じゅうじ・住職)す?」。
著云く、「末法の比丘、少(まれ)なり、戒律を奉ず」。
殊云く、「多少(いくばく)衆ぞ?」。
著云く、「或は三百、或は五百」。
無著、文殊に問う、「此間(すかん)如何が住持す?」。
 殊云く、「凡聖同居、龍蛇混雑」。
著云く、「多少衆ぞ?」。
殊云く、「前三三、後三三」。
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夢の中で文殊菩薩が、無著文喜に聞いた、「お前さん、どこから来たのか?」。
無著は云った、「南方からです」。
文殊は云った、「南方の仏法はどうなっているかな?」。
無著は云った、「末法の比丘ですから、少なく戒律を真面目に守っている者は少ないのです」。
文殊は云った、「戒律を真面目に守っている者はどれぐらいの人数になりますか?」。
無著は云った、「三百から五百名くらいでしょうか」。
今度は逆に無著が文殊に聞いた、「ここ五台山ではどうですか?」。
 文殊は云った、「悟った者も迷った者もいるよ。まあ、龍と蛇が混在しているといったところだね」。
無著は云った、「修行者の人数はどれくらいですか?」。
文殊は云った、「あちらに三人、こちらに三人くらいかな」。

文殊、無著 (むじゃく) に問う、『近頃、恁麼処 (いずこ) を離れしや』。
無著云く、『南方』。
文殊云く、『南方の仏法、如何にか住持する』。
無著云く、『末法の比丘 (びく)、戒律を奉ずるもの少 (まれ) なり』。
文殊云く、『多少 (いくばく) の衆ぞ』。
無著云く、『或いは三百、或いは五百』。
無著、文殊に問う、『ここにては如何に住持する』。
文殊云く、『凡聖同居 (ぼんしょうどうきょ)、龍蛇混雑 (りゅうだこんざつ) す』。
無著云く、『多少 (いくばく) の衆ぞ』。
文殊云く、『前三三、後三三(ご さんさん)』。

→ わたしは、一の如し、と言う。