碧巌録(へきがんろく) 第31則?   麻谷振錫(まこく しんしゃく)

挙(こ)す、
麻谷、錫を持して章敬に到る。
禅床をめぐること三匝、錫を振るうこと一下して、卓然として立つ。
章敬云く、「是是」。

雪竇著語して云く、「錯」。

麻谷また南泉に到り、禅床をめぐること三匝、錫を振るうこと一下して、卓然として立つ。
泉云く、「不是(ふぜ)不是」。
雪竇著語して云く、「錯」。
麻谷当時云く、「章敬は是という。和尚何としてか不是という」。
泉云く、「章敬は即ち是、これ汝は不是。此はこれ風力の所転、ついに敗壊を成す」。
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「錯」:錯はあやまりという意味である。ここでは 「だめだ!」、とか「しまった!」 という反省の意味で使われている。
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本則
ある時麻谷禅師は、錫杖を持って兄弟子の章敬禅師を訪ねた。
麻谷は章敬禅師が坐っている禅床を三回回って、錫杖をジャランと振って突き立て、意気衝天の勢いを示した。
それを見て章敬は「よし、よし(是是)」と肯定した。

雪竇はここに、「錯」と著語する。自分なら許さないという意味である。

麻谷はまた南泉禅師の所を訪ねた。
麻谷は南泉禅師が坐っている禅床を三度回って、錫杖をジャランと振って突き立て、意気衝天の勢いを示した。
それを見て南泉は「だめだ、あかん!(不是不是)」と否定した。

雪竇はここにも「しまった(錯)」と著語する。

麻谷は南泉に「章敬は是と言いました。南泉和尚はどうしてだめ(不是)と言うのですか?」と質問した。
南泉は、「章敬には関係ないよ。章敬はそれでいいさ。お前さんがいかんのだ。お前さんは風力に動かされている。それでは最後にはだめになるよ(ついに敗壊を成す)」と言った。  』


わたしと妻の共通の趣味の一つに競馬がある。2連勝とか、3連勝をすると、調教師も、馬主も、騎手も、勝てる、と言う自信がつく。ファンもまた、必勝を疑わない。
断然の一位のオッズである。これまでと違って、勝たなければならない。
プレッシャーで負ける。
こういう事がある。
いつもの自分を見失っているのだ。