夢中説夢・・・釈迦弁尼仏が言われた。「諸仏の身体は金色で.さまざまな福徳の姿で荘厳されていた。法を聞いてそれを
人に説こうとしてていつもすぐれた夢をみた。その夢の中で国王らなつたが.宮殿や一族を捨て.栄華をむさぼる欲望も捨て.
修行のため菩提樹のもとに行き.獅子の座に端座して.道を求めること七日.諸仏の智を会得して.最高の悟りを成就した。
ついで説法を始め多くの人びとを教化して長時間を過ごし.穢れの無いすぐれた法を説いて無数の人びとを救った。後に息を
引きとつて涅槃に入ったが.あたかも煙尽き灯消える如くであった。もし後世の悪世のなかで.この最高の法を説くならば.
その人は.さきに説いたようなさまざまな功徳を得るであろう」いま仏の説かれたことを学んで.諸仏の働きをよくよく究める
がよい。これはけつして譬えではない。諸仏のすぐれた法は.ただ仏と仏とのかかわりであるから.夢みている事も.覚めてい
る事も.ともに真実のすがたである。覚めているなかで発心・修行・菩提・涅槃があり.夢のなかの発心・修行・菩提・涅槃が
あって.夢みているのも.覚めているのも.それぞれ真実のすがたである。それには大小や優劣の区別は無い。
しかるに夢の中で国王になったなどと言うと昔の人も今の人も.それは最高の法を説く力によってこの様な
夢を見るのであろうと.誤って理解している。このような理解ではまだ仏説を明らかにしていないのである