原発停止なら交付金減 自治体向けに政府、再稼働同意促す

2015年8月12日 朝刊
経済産業省は二〇一六年度から、原発を抱える自治体に配る「電源立地地域対策交付金」を減額する方針を固めた。
一五年度予算では再稼働した原発のある自治体に配る交付金を新設しており、政府は再稼働の有無によって自治体の財政を揺さぶり、再稼働への同意を促す狙いとみられる。
露骨な「アメとムチ」に、識者から批判の声もあがる。

同交付金は国が原発の稼働実績に応じて立地自治体に配分してきた。
東京電力福島第一原発の事故後に全国の原発が停止した後も、国は地方財政への影響を和らげるため、
すべての原発が「最大限十三カ月フル稼働して三カ月の定期検査を受ける」という理論値(稼働率81%)に基づき交付金を配ってきた。
一五年度予算も、ほぼ前年並みの九百十二億円を計上している。

しかし震災前の原発の稼働率は平均70%で、事故前より交付金額が増えた自治体もある。
また、九州電力川内原発が再稼働したため、「交付金の趣旨に従って」(経産省関係者)稼働していない原発と差をつける必要があると判断した。
宮沢洋一経産相は十一日の記者会見で「現在の81%という割合はかなり高く、稼働実績などを踏まえて見直したい」と話した。

一方、経産省は一五年度予算でも、原発の再稼働など「環境変化」(同省)した自治体に配る十五億円の交付金を新設。再稼働したら「アメ」、停止なら交付金減額の「ムチ」という姿勢を強めている。

原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「カネで原発の再稼働を促せば、かえって原子力政策への反発を呼ぶ」と批判。
福島大経済経営学類の清水修二特任教授(財政学)は「交付金は原発を維持推進する政策誘導に使われてきたが、今後は地元自治体が廃炉を選択しても交付を受けられるようにして、本格的な『廃炉時代』に移行するべきだ」と語った。
(吉田通夫)