「北」には「北」の狙いがあるはずだ。
冷戦構造が崩壊した後、世界的に民主化の潮流が定着している中で、これ以上孤立化を深めることは得策でないとの判断があり、
文師を招待することにより、西側、特に米国とのパイプをつくりたいと考えているのではないか。

ここで注目したいことは、南北統一が現実性を一歩強めたものとなった今、その南北統一は民族の自決だということである。
その意味では、日本が単独で北朝鮮との間で国交正常化を進めることは意味をなさなくなる。
むしろ、韓国と北朝鮮との間の統一への枠組みを越えるのではなく、背後にあってわが国の役割に徹するべきである。
したがって日朝国交回復は時期尚早であると言えよう。

文師が世界的に展開する統一運動は、崩壊した共産主義国を救済し、
そのうえ共産主義を己の生きる糧としてきた共産主義者の魂の救済をも目指している。

そして、現在、家庭の崩壊、個人主義の行き過ぎによるエゴイズムの蔓延の危機にある
米国はじめ資本主義陣営にも、文師の運動の輪が広がっている。
文師は民主主義は崩壊の岐路に立っていると予言すらしている。

このような世界的視野に立つ文師のビジョンと運動に今後とも注目したい。

世界日報 平成3年(1991年)12月7日 社説