毎日新聞 12月15日(火)9時30分配信
<長崎ストーカー殺人4年>警察不信、・・・
 長崎県西海(さいかい)市の山下美都子さん(当時56歳)、義母久江さん(同77歳)が、美都子さんの三女(27)の元交際相手で無職の
筒井郷太(ごうた)被告(31)=1、2審で死刑、上告中=に殺害されてから16日で4年となる。・・・遺族は今も癒えぬ悲しみを抱え、第三者による検証を求め続ける。
・・事件1週間前の2011年12月9日、好きな花を自宅で育てていた久江さんは妹、石橋カズエさん(77)に
ネリネの球根を渡した。最後の世間話。あの時、久江さんは「無言電話がよくある」と表情を曇らせていた。・・・
 11年12月6日、三女らは筒井被告による暴力でけがをしたと千葉県警習志野署に被害届を出そうとしたが、
「1週間待ってほしい」と言われた。同9日、筒井被告が三女宅周辺をうろついても、事件2日前の同14日、
筒井被告が三重県桑名市の実家を飛び出し行方不明になっても、千葉、三重、長崎の3県警は情報を共有せず、
対策を取らなかった。
 12年3月、3県警は連携不足を認め、「重大事件に発展するとの危機意識が不足していた」とする検証結果を
公表した。ところがその後、「1週間待ってほしい」と言った習志野署の事件担当者らが、被害届の受け取りを拒否した2日後、
2泊3日の慰安旅行に出ていたことが判明した。
 全国的にストーカー被害は後を絶たず、・・・警察の対応が問題となったケースも相次いだ。
 「なぜ起きて、なぜ防げなかったのか。警察が行方不明になった被告を追うことなく、母と姉に誰一人逃げるように
伝えなかったのが悔しい」。久江さんの次男茂人さん(59)らは、各県警が情報を共有していたら事件は防げたのではないか
という無念を晴らせずにいる。警察側の検証に納得せず、「3県警にまたがるような事件では、縦割りで内向き
な組織には検証に限界がある。客観的に調査しなくては意味がない」と第三者機関による検証を求め12年4月と13年1月、
3県警や国家公安委員会に文書で要望したが、回答はない。茂人さんは「一つ一つ詳細に検証して初めて再発防止につながる教訓が得られる」
と訴えている。【梅田啓祐】

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