都会生活、おおぜいの人の中での生活をうまく営めなかった忠夫が、故郷信濃大町に帰ると、母は温く迎えてくれたが、父の態度は冷たかった。
百姓仕事は父母で充分なのだ。どうにか電気店に勤めた忠夫は、幼なじみの哲治に出会い、連れて行かれたバーで、ホステスのあけみを紹介されるが、
忠夫には、女はわずらわしかった。今の忠夫には、山岳、渓流、イヌワシや雷鳥だけが心を優しくしてくれる。
夏祭りの夜、哲治が村を出るので金を貸して欲しいと、忠夫を訪ねた。いったんは承知した忠夫だが、哲治がホステスのいづみと一緒と知って反対するのだが、
結局二人は都会に向かった。女をわずらわしいと思う忠夫も、若い血はおさえ難く、牧場で働くレイコの部屋に入り、女の匂いの残る布団を抱き、
興奮を覚えることもあった。いづみに逃げられて帰ってきた哲治が、彼女のいたバーに行くと、そこには、あけみとヤクザがおり、
哲治はヤクザに手ひどく殴られてしまう。止めに入った忠夫も殴られるが、その無鉄砲な姿にかつての自分を想い出したその男は、
二人をあけみの部屋に寝かせ姿を消すのであった。忠夫と哲治の間の友情は深まり、忠夫は、酒でも飲みながら、このまま世界が続けばいいと思った。
ところが、哲治は見合をして結婚を決めてしまい、それが引き金となって友情にヒビが入り、そして毀れた。居場所を失った忠夫は再び村を出る決意をする。
村を発とうとする朝、忠夫がバスを待っていると、村へ通じる道をレイコが歩いている。忠夫はその後を追う。そして白樺林へ。やがて正午になろうとしている。