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生活保護のCWだけど質問ある? Part.53 
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0513今日のところは名無しで
垢版 |
2019/03/13(水) 18:08:18.75
http://www.incl.ne.jp/~ksk/ksk/jyo/ji980901.html

−大牟田自動車裁判(増永生活保護訴訟)−判決の持つ意味

増永訴訟弁護団 事務局長 ・ 弁護士  平田 広志
(1998.9.15 NO,804「(月刊)生活と健康」)


−、増永さんの勝訴が確定

「原告に対する保護廃止決定を取り消す。」

 他人の自動車を借りて運転したことを理由に生活保護を廃止した福岡県大牟田福祉事務所の処分の取り消しを求めて争われていた大牟田自動車裁判(増永生活保護訴訟)で福岡地方裁判所(福岡地裁)は、
五月二六日、「(増永さんに対する)保護廃止処分は重きに失して処分の相当性を欠く」として保護廃止処分を取り消す原告増永さん勝訴の判決を言い渡しました。

 判決後、増永訴訟を支援する会、生活と健康を守る会、及び原告弁護凶は、被告大牟田福祉事務所と上級庁である福岡県に対して「控訴することなく判決に従え」との申し入れをしていましたが、
その結果、被告側は控訴を断念し、増永さんの勝訴が確定しました。


二、大牟田自動車裁判とは

 原告の増永さんは、一九八九年に夫と離婚し、パート勤めをしながら四人の子どもを育て、収入の不足分を生活保護によつてまかなっていました。交通の便の悪い地方都市・大牟田市に居住し、四人の子どもを育てながら外で働き、
家事の一切をし、その合間をぬって買い物をしたり、市役所や銀行や病院や子どもの学校に行かなければならない増水さんにとって、必要に応じて知人などの自動車を借りて利用することは、必要不可欠なことでした。

 ところが、大牟田福祉事務所は、保護開始直後に、増永さんに村して「自動車の所有、借用及び運転を禁止する」との文書指示を行った上で、その後再三にわたってケースワーカーが増永さんを尾行し、
一九九三年一〇月、増永さんが弟の車を借りて久留米市に住む長女の病気見舞いに行こうとしていたところ、尾行していたケースワーカーに呼び止められ、右の文書指示に違反したとして保護廃止処分を強行したのです。

大牟田市は旧産炭地筑豊地区と並んで炭坑閉山による失業や生活保護受給率の高い地域ですが、このような地域でも生活保護受給率を強引に減らそうとする行政の姿勢がこのような事件を引き起こしたと言うことができると思います。


三、「最低限度の生活」にも自動車の利用は不可欠

 わが国でモータリゼーション(自動車の大衆化)と言う言葉が広く使われるようになったのは約三〇年前、一九六〇年代のことです。
 当時は、自動車がすさまじい勢いで国民生活の中に浸透、普及し始めていた時期でしたが、まだ国民の誰もが自動車を所有するという状況ではありませんでした。

 しかし、その後の三〇年間、わが国における自動車の普及率は一貫して上昇を続け、一九九〇年代には、世帯あたりの自動車の普及(所有)率は全国平均で八割を超えるに至っています。
しかも、東京など大都市圏の普及率はかなり低く、逆に大牟田市などの地方都市の場合、普及卒は九割をはるかに超えているのが現状です。

 これらの数値からも明らかなように、今日、わが国では、国民のほとんどが(一家に一台は)自家用自動車を所有しているのです。このように、国民の生活が自動車の利用を前提に成り立っている
「車社会」においては、必要に心じて自動車を利用することができなければ、「健康で文化的な最低限度の生活」を維持すること自体困難というべきです。


四、自動車の所有を一律に禁止する理由はない

 ところが、わが国の生活保護の運用の現実においては、障害者や山間へき地からの通勤などの例外を除いては、生活保護世帯に自動車の所有を認めていません。
 
0514今日のところは名無しで
垢版 |
2019/03/13(水) 18:09:28.39
 
・・・また、厚生省は、一般の生活用品については、処分価値が少なくとも「当該地域の一般世帯との均衡を失することにならないと認められる場合」(すなわち、普及率が高い場合)
には所有を認めるとの基準を採用している(厚生省社会援護局長通達・保護の実施要領第3・4・(4)ィ)にもかかわらず、自動車については地域における高普及率をまつたく考慮していません。

 このように、自動車の所有に関しても、その処分価値にかかわりなく一律にこれを禁止している現在の生活保護の運用は法律上の根拠を欠いており、また、通達(保護の実施要領)の立場にも反しているといわなければなりません。
 本件は、自動車の析有の可否が直接争われた裁判ではありませんが、本件訴訟においても被告・厚生省側は、自動車の所有を一律に禁止している根拠を示すことができませんでした。

 先に述べたように、今日では、国民が普通の社会生活を送る上で、自動車を利用することが不可欠となっており、また、被保護世帯に自動車の所有を認めても地域の一般世帯との均衡を失することにならないことは
明らかですから、自動車の処分価値が小さいことを条件に被保護世帯にも自動車の所有を認めるべきです(今日では、売ってもお金にならないか、あるいはきわめて低額の中古自動車も多数存在しており、
そのような自動車であれば補足性の原理とも矛盾しません)。


五、自動車の借用を禁止する棍拠はない

 本件訴訟は自動車の所有だけでなく借用・運転までも禁止された事実ですが、増永さんは自動車を所有してはおらず、借用・運転を禁止することの可否が争われました。
被告大牟田市福祉事務所と厚生省は、借用を禁止する根拠も生活保護法四条一項(補足性の原則)であることと主張していました。

しかしながら、他人所有の自動車を処分して生活費にあてることができるわけなく、また、借用した自動車を所有者に返還することは補足性の原理と何の関係もありません。

 被告大牟田福祉事務所と厚生省の論拠の破たんは明白でした。そこで、被告側は、借用を禁止する根拠として「自動車は最低限度の生活にはふさわしくない高価な生活用品であるという国民感情」なるものを持ち出し、
主張しましたが、(このような国民感情が広く存在するということ自体疑わしいばかりでなく)、このょうな国民感情を根拠とすることは「保護を受けているくせに車なんかに乗るな」
との差別意識を肯定・容認しているに等しく、わが国の生活保護行政の姿勢を端的に物語っています。

 このように、保護受給者に自動車の借用・運転を禁止する根拠も存在しません。


六、厚生省に運用の転換を命じる判決

 今回の福岡地裁の判決は、右のような国民生活の実態と国民の常識からかけ離れた保護の運用が続く中で、自動車の保有(所有及び借用)について初めて下された司法の判断です。

 判決は「自動車の著しい普及の拡大及びそれに伴いかなり低価格の中古車等も出回るようになっていることなどの社会情勢の変化」を指摘した上で「@通勤のための公共交通機関を利用することが著しく不便である場合や
身体障害者の通勤、通院、通学等自動車を利用する必要性が高いこと、A保有にかかる自動車の価格が低廉であること、B維持費などが他からの援助等により確実にまかなわれる見通しがあることなどの要件を満たし、かつ、
その保有が社会的に適当と認められるとさには、例外的に保有が認められるというように、その要件を一定程度緩和して解釈・運用する必要があるというべきである」

さらに、判決は、自動車の借用について、

「所有の場合に比して例外事由に該当する場合(すなわち、借用を認めるべき場合)が多いであろうことが予想されるし、一時的な借用の場合には、これを禁止 するべき度合いは小さくなると考えられる」

と述べて、借用の場合には所有の場合よりさらに緩やかに自動車の便用を認めるべきであるとの判断を示しています。
 
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