>>705
なあ、お前と飲むときはいつも日商○井だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺がソウルの海軍経理部主計長で、お前が月30万稼ぐフリーターだったとき、おごってもらったのが日商○井だったな。
「俺は、毎晩こういうところで飲み歩いてるぜ。金が余ってしょーがねーから」
お前はそういって笑ってたっけな。

俺が昭和22年に衆議院議員になり三木改造内閣で自民党幹事長に指名された時に、お前は月50万稼ぐんだって胸を張っていたよな。
「毎晩残業で休みもないけど、金がすごいんだ」
「バイトの後輩どもにこうして奢ってやって、言うこと聞かせるんだ」
「県知事や地元議員も、バイトまとめている俺に頭上がらないんだぜ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、日商○井だったな。

あれから数十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり日商○井だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を
いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?
でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの500円札を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
俺が衆議院議員を議員辞職したのを聞いたよ。ダグラスグラマン事件で国会に呼ばれたのも知ってたよ。
新しく入った政党で、3回りも歳の違う、30代の経済企画庁長官の中に混じって、使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってバイト続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ日商○井で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。