生活保護と「働く能力」の関係は? 2審も勝訴

この訴訟を支援してきた静岡大学の笹沼弘志教授によると 「稼働能力」を理由にした生活保護の却下・停止をめぐる裁判は、
同時期にいくつか起きているが、2012年に控訴審判決が出た通称 「新宿七夕訴訟」から流れが変わってきたという。
笹沼教授は「稼働能力は客観的に図るのが難しいため、 以前は福祉事務所のさじ加減で、保護を打ち切る口実として利用されていた。
しかし、一連の裁判によって、『稼働能力』を理由にして生活保護を停止するためには、 『稼働能力が活用されていないこと』を
福祉事務所の側が証明しないといけない、 という流れになったと思う」と指摘していた。


働く能力があっても、それを現実に活用しうる環境がなければ補足性の要件を欠けるということにはなりません。

この点については、判例上も「補足性の要件は、申請者が稼働能力を有する場合であっても、
その具体的な稼働能力を前提とした上、申請者にその稼働能力を活用する意思があるかどうか、
申請者の具体的な生活環境の中で実際にその稼働能力を活用できる場があるかどうかにより判断すべきであり、
申請者がその稼働能力を活用する意思を有しており、かつ、活用しようとしても、実際に活用できる場が無ければ、
『利用し得る能力を活用していない』とは言えない」とされています。


(林訴訟・名古屋地方裁判所平成8年10月30日判決。名古屋高等裁判所平成9年8月8日判決同旨)



■生活保護打ち切りで賠償命令=具体理由不記載「違法」−津地裁■
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018032001068&;g=soc


生活保護を受給していた三重県四日市市の男性(65)が保護を打ち切る廃止処分により精神的苦痛を受けたとして、
市に賠償を求めた訴訟の判決が20日までに津地裁であった。岡田治裁判長は請求を一部認め、市に慰謝料5万円の支払いを命じた。
(判決は15日付)

判決は、廃止処分を通知した文書に処分の具体的理由が記載されていなかった点について、違法と判断した。
弁護団によると、詳しい理由を示さずに保護を打ち切るケースは各地で相次いでいるという。
判決によると、市は2014年に男性の生活保護を決定したが、「指導・指示に従わないため」として、
具体的理由を示さないまま16年3月に保護廃止処分を決めた。

判決で岡田裁判長は、月に2社以上の企業面接を受けることなどを求めた市の指示に男性が違反していたものの、
「程度が悪質だったとは言えない」と指摘。保護の停止より重い廃止処分を選択する場合について、
「原因となった事実関係を具体的に記載することが求められる」との判断を示した。