失礼な言い方かもしれませんが、デーブさんの場合は「移民という個」が素晴らし
いダジャレを生み出し続け、こうした暗い日々にあって日本人の心を慰めているのだ
と思います。いや「移民」というのは適切ではないかもしれません。私にはデーブさ
んのダジャレは、そのまま日本の文化の豊かさ、日本のコミュニティの健全さを象徴
するようにも思われます。日本人以上に日本人という域に達した芸だと言えるでしょ
う。私の場合は、過去に偏見を抱いていたことへの後悔も加わって、とにかく頭の下
がる想いがするのです。

 もう一つ、頭の下がる想いのする理由は、日本が決して移民国家ではないというこ
とです。私の場合は、アメリカという移民国家に住んでいます。日本人としてアメリ
カに住むということは、そこではある意味で楽なのです。州によってカルチャーが異
なるものの、やはり移民の末裔と近年の移民が作り上げている国家です。異境に暮ら
すことの孤独感であるとか、マイノリティであることの息苦しさということでは、確
かに「甘やかされている」のを感じるのです。私の住む、ニュージャージーとかニュ
ーヨークでは特にそうです…

(冷泉彰彦『from 911/USAレポート』第509回
「『移民という個』に救われる世界」)