● 無観客で変わる紅白歌合戦「一人頭を下げる松田聖子」

https://news.yahoo.co.jp/byline/horiikenichiro/20210103-00215901/

紅白歌合戦で歌唱前に頭を下げる松田聖子

2020年大晦日「71回紅白歌合戦」は無観客でおこなわれた。
松田聖子が出てきたのは終盤、11時すぎだった。
後ろから5本のライトが当てられ、
白いドレス姿でハンドマイクを持って立つ松田聖子。
前奏が始まり、カメラが少し近寄ると、松田聖子は少し頭を下げた。
ふと、なにかをおもいださせる姿である。

「瑠璃色の地球」の2020年バージョンを歌い終わり、一礼した。
すぐあとに誰かと目が合ったのか(司会陣の誰かだとおもうが)
ちょっと笑って礼をして、後奏も終わると、また深々と頭をさげた。

歌う前と終わりに一礼するのは、
いかにも昭和の歌謡スタイルだ、と強くおもいだした。
たくさんの歌手が出ていた昔の歌番組は、一人の持ち時間が短かかった。
一礼して、歌って、一礼して去る、という歌唱スタイルをよく見かけた。
いまはあまり見かけなくなった。

40年経ってそのスタイルを守っている松田聖子もすごいが、
果たして2020年世界ではどれぐらいの人が歌唱の前後に一礼するのか、
「第71回 紅白歌合戦」の出場歌手を眺めてみた。
歌う前に頭を下げていたのは、松田聖子ただ一人

2020年の紅白歌合戦の出場歌手は、48組になる。
「ディズニースペシャル」「『エール』スペシャル」をそれぞれ1チームと数え、
GreeeeNも別に1組と数えると、48になる。

松田聖子の歌唱は45番目だった。
そして「前奏が始まってから歌うまでに一礼する」
というのは松田聖子、ただ一人だった。
これだけで彼女が紅白歌合戦に出ている意味があるのではないかと、
昭和の記憶がある世代からはおもう。
令和2年の紅白歌合戦では、松田聖子以外、誰も前奏中に一礼しない。

(中略)

そして、松田聖子は「歌う前の礼、歌い終わってから礼、後奏が終えての礼」
という「聖子の三回の礼」を見せてくれた。これが昭和の歌唱のようにおもう。

頭を下げているだけの姿が、ときに強く心に響いてくるのは、
おそらく見てる人たちだけに向けてではなく、
もっと広く大きく深いものに対して頭を下げているからだろう。
歌の神さまというか、人前に出ることを見守る神さまというか、
かなり高みの存在に対する一礼に感じられ、
見ている私たちも一緒に頭を下げたくなってしまう。
ほかにも歌い終わったら、まず礼をしていた人たちはさだまさし、
ゆず、Mr.Children(ミスターチルドレン)と福山雅治がいた。

(後略)

https://i.imgur.com/q7XQepm.jpg