● 「秘密の花園」 松田聖子

作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆 (1983年発表)

バーネットの小説から取られたこの曲は、
松田聖子によって見事な変貌を遂げた。
淡い初恋物語のように見えて、途中から見事な幻想へと変容してしまう。

月灯りの魔法によって、彼は魔女である聖子に引き寄せられ、
聖子を優しく抱きしめた途端、彼は聖子に魂を抜かれ、
誰も知らない秘密の花園へと導かれて行く。
この詩はE.T.A.ホフマンの物語にも似た傑作である。

イントロ部分の弦のピチカート演奏と、トライアングルのサウンド
初めて聞いた時、全身に電気が走るほど、画期的な導入部であると思った。
元来、松任谷正隆氏のは、音の広がりだけでなく、
奥行きの広さを感じるアレンジを施すのだが、
今回はその腕にさらに磨きがかかり、艶めかしい音色も印象的だ。

B面の「レンガの小径」は、ヨーロッパの雰囲気を持った作品。
A面とは対照的な作風で、物悲しい歌である。
前年に発表された「制服」よりも、さらに深い悲しみがそこにはある。

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